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column

March 25, 2023

シャッター音を傍らに
scene39 【3月】春はあけぼの ハクモクレン

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

朝霧の中に咲くハクモクレン




【3
月】春はあけぼの ハクモクレン


毎月3月はカレンダー撮影で菜の花の撮影を中心に九州各地を巡っているけれど、
菜の花畑は年々少なくなってきているように思う。
話によると鹿やモグラの影響だという。
かつて筑後川河川敷などは黄色の道が続いていたけれど、今は所々で黄色く点在しているという印象。

そんな春先のある日、車でラジオを聞いていると、パーソナリティがハクモクレンの話をしていた。
この時季の夜明け前、道端でハクモクレンが満開になっている姿が現れると、
まるで裸の女性に出会ったような衝撃を受けるといった話だった。

確かに日の出前のうっすらと霞んだ春のあけぼのに、
真っ白な満開のハクモクレンはとても艶やかで色っぽいイメージに見えるのかもしれない。
春先のくじゅうの山々にコブシが咲く姿も何だかそれに似ている。
そんなイメージを抱かせる花は他にないだろうと思う。


一つ一つが大きくふくよかな花



そして一気にハクモクレンへの興味が増したため、
ハクモクレンの名所を探しながら九州各地を巡っていたのだった。

向かったのは宮崎県小林市にある荻の茶屋。
ここは管理されている小山があり、大きなハクモクレンが数本ある。

夜明け前に到着すると、周囲は朝霧に包まれていた。
まだ暗いうえに朝霧なのでハクモクレンは見えないだろうと思っていたら、
真っ白い花が朝霧の中からはっきりと姿を現したのだった。

巨大な木々に吊るされたランプがぼんやりと灯っているようだ。
20m近い高木なので女性というイメージは無理だけれど、
とても美しい巨大な妖精とばったり出会ったような感じだ。



朝霧の夜明け前、うっすらと見えてくる



朝日が顔を出すと、朝霧は次第にどこかへと流れはじめ、
真っ白でふくよかな花の一つ一つはさらに輝きを増していった。

やがて朝日が届き始める

周囲の朝霧も次第に晴れてきた



この花の見頃はあっという間に終わってしまうため、
ちょうど満開のタイミングでの撮影はなかなか難しいようだ。

この春、天気にも恵まれてとてもいいタイミングで撮影ができたことは、
僕にとってはとても縁起のいい花となりそう。

あの朝霧の中で出会ったハクモクレンは、幻の美しい光のような美しさで記憶の中を灯している。
今まで知らなかった新たなる春と出会えたような気分で、
の季節を迎える。



新たなる春の魅力に







●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →