column
August 20, 2023
シャッター音を傍らに
scene43 【8月】マシカク写真
福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya
【8月】マシカク写真
愛用していたクラシックカメラ、フジカハーフがとうとう壊れてしまった。
今年初めに故障して修理をお願いし、まるで新品かと思うようなピカピカ状態で生まれ変わったのだが、
再び同じ症状でフィルムの巻き上げが不能になってしまった。
60年近く前のカメラなのでしょうがないとは思うけれど、
クラシックフィルムカメラならではの適当な露出、写り、
予期せぬゴーストの出現(幽霊ではありません)がとても気に入っていた。
先日カメラに入れっぱなしになっていたフィルムをようやく現像した。
そして最後の一枚は猫だったことを思い出した。
その横に変な赤いラインが入っているので、これが何らかのトラブルのサインかもしれない。
数年前から中判デジタルカメラを愛用している。
ちょっと重いけれどきっちり安定の風景写真にはかかせないカメラとなっている。
せっかくなのでこのカメラで何とかフジカハーフのような感覚撮影ができないものかと様々な設定を試していた。
もちろんそこにはもう一台持ち歩くのは膝にこたえるという現実的問題もあるわけで。
その結果、70年代アメリカンニューカラーの雰囲気(よく分からないけれど)
を再現したという設定を使い始めている。
これに自分なりの好みをさらに加えて気に入った色合いを見つけ出している。
そして比率はせっかく中判だからということでマシカクを選んだ。
インスタなどですっかりおなじみになったマシカク写真ではあるけれど、
やはりハッセルブラッドやキャパも使っていたローライフレックスの6×6への憧れがある、
なんて写真家らしい事を適当に言いながらインスタのマシカクってかわいいなあとかねてから思ってたりして。
ということでこの頃はマシカク写真を仕事の合間も含めて、気になったものを何でも撮っている。
色合いも比率も変わればずいぶん感覚は切り替わる。
これと並行してモノクロマシカク写真も撮り始め、これに添える短い文章も書くようになった。
そんな事を続けていると些細な出来事にも目を向け始めることになる。
もちろん今までも似たような事をしてきたけれど、
どこかで新たなる試みをして新鮮な気持ちになることは必要だなと実感している。
これはフジカハーフが最後に伝えてくれたことかなとインテリアになったカメラに改めて感謝している。
●写真・文/川上信也
■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami
■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →☆