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column

October 05, 2020

シャッター音を傍らに
scene11 【10月】久しぶりに撮影の旅

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

阿蘇の噴煙が夕焼けに染まっていた

 


【10
月】久しぶりに撮影の旅

 

車のエアコンが不調のため、今年の夏の運転はあまりにも過酷だった。

仕事では同乗者を汗だくにさせてしまったし(間違えて暖房入れしまったことも要因)、
なかなか撮影に出かける気持ちにもなれない猛暑の日々だった。

そしてようやく暑さから解放され、
世の中もちょっと落ち着きを見せはじめた秋の日の午後、久しぶりに撮影に出かけた。

車にはしっかりふとんを積み込み(寝袋ではなくふとん!)、
ザックには3日分の着替えや洗面用具、そしてカメラ2台とレンズ3本。
こんな高揚した気分で準備するのは何か月ぶりだろうとつぶやきながら都市高速に乗った。

 

阿蘇の山々が見えてきた。
あまりにも久しぶりで道を間違えながら高台へと向かい、
赤く染まる噴煙を眺めながら草千里に到着。

すでに日は落ち、馬たちは轍を歩きながら草を食んでいる。
薄暮の草千里に浮かび上がる白い馬。
たったそれだけでも感動的なシーンに思えてくる。

やはりこれも久しぶりだからだろうか。

 

馬たちが轍を道草しながら帰ってゆく

 

次の日は早朝からくじゅう方面へ。

夜明け前、青く霞んだ草原の向こうに九重連山が見える。
これらの山々を眺めるのも春以来となる。
これほど長い間くじゅうに行かなかった事が今まであっただろうか。

ひんやりとした朝の大気の肌触り、朝焼けにそまりゆく空、
世の中の出来事が信じられないくらい以前と何も変わらない心地よさが広がっている。

車では先月発売されたジョン・ウィリアムズ指揮ウィーンフィル演奏のCDを聴いていた。
『E・Tのテーマ曲を聴きながら朝の月を眺めるってなかなか最高。

 

三日月輝く空に朝焼けが広がってゆく

 

その後、佐賀の棚田、雨の耳納連山、白野江植物園、平尾台などをめぐり、
空は come rain or come shine. 暗い世界、明るい世界の繰り返し。
まるで人生のようだなと思いながら帰ってきた。

やはり写真家というものは、シャッター音がいつも傍らで響いていないと落ち着かないもの。
ここ数か月の不安な気持ちがほんの少しだけ解消したように思えた。

撮影の旅はこれからもつづく。

収穫の終わったつづら棚田は雨模様

白野江植物園ではシロヒガンバナが満開だった

夕焼けの平尾台を歩く

 



●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →