column
February 29, 2020
ひとしずくの台湾 ーMade in Taiwanを探しにー
drop17 「ロマンチック台三線芸術祭」から生まれた 新たなアートスポット
〈後編〉〜新竹・北埔&苗栗・大湖〜
福岡市在住フリーランスライターが綴る
「Made in TAIWAN」をテーマにしたアレコレ。
仕事でもプライベートでも、何度でも訪れてしまう台湾の魅力を
ゆるゆると発信します。
by arei maeda
drop17 「ロマンチック台三線芸術祭」から生まれた
新たなアートスポット〈後編〉〜新竹・北埔&苗栗・大湖〜
苗栗県の大湖(ダーフー)まで足を延ばしました。
■新竹(シンジュー)県 北埔 (ベイプー)エリア
足を運びやすいエリアです。台北駅から新竹駅までは高鉄(新幹線)で約1時間。
新竹駅から『北埔老街』まではバスに乗り40分ほどで到着です。
客家の人たちの暮らしと歴史が色濃く残る地域です。
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入り組んだ路地は、先住していた人たちとの争いを避けるための知恵
ひと昔前の町の様子や住民の暮らしぶりがわかる写真の展示が、
町並みにとけ込み、昔と未来とを繋いでいます。
北埔で人気を博したのが、路地裏を歩きながら
「ウォーリーを探せ」ならぬ「9体の小人を探せ」!
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さて、どこにいるでしょう?
これらは、スペイン人アーティスト、Isaac Cordal作『街道物語』。
監視カメラの上に佇んでいたり、農民と思わしき人が携帯電話を手にしていたり、
現代社会へのアイロニーを滲ませたアートと町歩きを融合させたもの。
独特の視点がユニークでした。
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1946年から3年の月日をかけて建てられた『姜阿新洋樓』(土日は入館料50元)
見事な彫刻と色彩が艶やかな廟『慈天宮』をはじめ、製茶ビジネスで栄えた姜一族が
贅の限りを尽くした中国×西洋の歴史建築『姜阿新洋樓』などの古蹟も一見の価値あり。
散策を楽しみながら、客家独自の料理や
もてなしのお茶とされた擂茶(雑穀や豆などをすり潰した健康茶)も楽しみたいものです。
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台三線をさらに南下し、台湾中部に位置する苗栗(ミャオリー)県へ。
大湖(ダーフー)はツアーの中で最もローカルな山間部にありますが、
イチゴの名産地として有名。
露地栽培(日本と違ってハウスじゃないことにびっくり!)のイチゴ畑が
道の左右にずらーっと連なる景色に驚きます。
シーズンになると、台北をはじめ、台湾中に大湖産のイチゴが出荷されるのだとか。
日本統治時代に造られ、今も現役という狭小な水路をくぐったり、
客家の土地のスピリッツを感じながら展示会場へ向かいました。
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ほわんと現れたオブジェは、藁でできた作品「茶窩」(范承宗)。
客家人にとって大切な産業であり、人の輪を紡いできた台湾茶ですが、
ポットを温めるティーウォーマーは、昔は藁でできており、
そうした客家の生活の工夫をかたちにしたものです。素朴でかわいいですね。
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座ってひと休みしたり、中は交流の場
そこからほど近い場所には、生き物のように見えるオブジェが、
手つかずの自然の中に姿を現します。
『生命の痕』(伊祐嘎照)は、客家人を「種」として表現し、
この土地に根を下ろし暮らしてきた歳月を象徴したもの。
柔和な造形の美しさとともに、花蓮出身の原住民族(日本語でいう先住民族と同義語)である作者が
客家の歴史文化を理解し表現していることが、何より素晴らしいと感じる作品でした。
白いロープ状の素材で編まれた造形物に、自然や生命の躍動感を感じます。
移住してきた客家人が原住民と関係を築き、土地に根付いていった様子を
「編む」というプロセスも含めて表現しています。
腰かけたり、靴を脱いで寝転んだり、自由に過ごせるアプローチも素敵です。
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なぜ素材に白を用いたのか(汚れませんか)との問いに、
「だんだん大湖(この土地)の色になっていくから」と話す
アーティストの方の言葉も印象的でした。
主に新竹や苗栗の山間部に移り住む中で、原住民族との争いも起こりました。
けれど、長い営みの中、結婚などのかたちで少しずつ周囲と折り合いながら、今に至っているといいます。
客家人は商売上手、勤勉、倹約家などといわれますが、
その個性は開拓の歴史において、そうした人間同士の共存本能として生まれる
粘り強さや厳しい自然との共生の上で培われてきたのではないか、と実感。
だからこそ、そこから派生する作品の優しさ、ダイナミックさは見応えがありました。
道々ずっと、ある時は包み込むような、
ある時は迫りくるような、自然の美しさに圧倒されていました。
まさしく自然との共生であり、生命の息吹き、家族や人と人のつながり……
瞬間瞬間、この上なく美しい魂に触れられたような、センス・オブ・ワンダーな旅に。
その分、普段出会えないものに遭遇する発見や楽しさも待っています。
客家人の逞しくもしなやかな道のりをたどる旅。
あなたの行ってみたいリストにぜひ加えてみてください。
[住所] 苗栗縣大湖郷大寮村大窩1-10號
[露店風呂開放時間] 9:00〜22:00(200元・週末は150元) [宿泊] 2人部屋3300元〜 http://ts-spa.com.tw [アクセス] 台鉄「苗栗駅」から「大湖、卓蘭」行きの5656番・苗卓線バスに乗り、「大湖郷公所」バス停下車。5655番に乗り、「老糖廠」で下車。そこから徒歩15分ほど。 |
●写真・文/前田亜礼
■■プロフィール■■
●前田亜礼(まえだ・あれい)/福岡市在住フリーランスライター。
大分県日田市出身。台北のガイドブック執筆をきっかけに、2009年から台湾へ。
以来、仕事の合間を縫っては気まま旅を楽しんでいます。いつかは台湾暮らしを夢見て、中国語と二胡を修業中。