想いにふれる メイドイン

立冬の頃。冬の気配が感じられるね

column

October 04, 2019

シャッター音を傍らに ~福岡⇔くじゅう白丹~
scene04 【10月】 神無月への三日間

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by shinya kawakami

久住高原に秋の雲が広がる


【10月】 神無月への三日間


秋の気配漂うくじゅう白丹に、三日ほど滞在していた。

特に用はなく、つい先日まで慌ただしく過ごしていた
福岡での日々を惜しむように思い出しながら、自然の中で心をリセットする。
これが目的なのかもしれない。

白丹では夜明け前に目が覚める。

どうしてなのか分からないけれど、旅先では早起きというあの感覚だろうと思う。
とりあえず車に乗り込み、星の瞬きが薄らいできた心地よい薄暗さの中を走ってゆく。

BGMはシカゴの『Wishing You Were Here』。
浮遊感漂う美しいコーラスが朝の雄大なる高原に溶けこむように響いてゆく。

 

道の向こうで朝焼けが始まっている

 

やがて空は明るみはじめ、朝焼けが空を包み込む。
夜明けのたびごとに蘇るみずみずしい世界。
高原の片隅に車を止めると、鳥たちの朝の歌が聞こえはじめる。

この「くじゅう夜明けのドライブ」はここ数年、
僕にとってかけがえのない時間になりつつある。

シャッター音を傍らに写真の力を改めて確認しながら、そっと高原の風が背中を押してくれる。


朝もやの中、くじゅうの山々が姿を現す


三日間の滞在を終え、福岡の日常へと帰ってゆく。

途中、男池の森に立ち寄る。
ここも僕にとっては大切な場所。
歩いているだけで様々な悩みもすべて浄化してくれるような不思議な感覚が、
大地を踏みしめる足音と共に体を覆う。

木々と水、花々が絶妙のバランスで調和を保っているからだろうか。
目には見えない深みがあるようにも思えてくる。

散策後に森の入り口にある男池茶屋『おいちゃん家』のおいちゃんと
しばらく花の話をしながら時を過ごす。

川音が響いている。きっと湧き水の音だろう。

 

静粛に包まれる男池の森


福岡県に入り、秋月で知り合いの家具デザイナー、
山本育也さんのアトリエ『liberte’(リベルテ)』に立ち寄った。

里山風景に不思議と馴染んでいる白いコンテナ。
この中に山本styleの世界が広がっている。

 

田園風景の中に現れる白いコンテナ『liberte’』

 

あるものを使い、無いものを造る。

バーンウッドと呼ばれるアメリカ各地の納屋で使用されていた古木を利用し、
山本さんは作品を自由に、表情豊かに生み出してゆく。

ルールにとらわれない斬新なデザインで、既製品には決してないモノを創り出してゆく。


100%の完成品ではなく60%にすることで想像力を与える


いつものように山本さんと音楽の話をしながら、あっという間に1時間が過ぎてゆく。
楽しい時間は過ぎるのも早い。

家具の世界も音楽の世界も、写真の世界も終わりはない。

 

長身188㎝の家具デザイナー・山本育也さん

 

様々な風景や魅力的な人々に出会いながら、僕の心は開かれてゆく。

「神秘的な出来事は馴染み深い場所で起きるもの。地球の裏側まで行く必要はない」
写真家ソール・ライターの言葉が頭をよぎる。

そんなことを実感する神無月へと向かう三日間の旅。



■『liberte’
所:福岡県朝倉市上秋月1222-13

電:070-4693-7788
P:あり
http://meubledechic.com/



●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →☆