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column

June 08, 2022

いいにおいのする台所研究所
連載 第45回 息子と食。

ワクワク。

場所の名前は、「いいにおいのする台所研究所」。
ここで私が皆さんと食べものの話をするのです。
誰に気兼ねすることなく、
最初から最後までずっと食べものの話をするのです。

ドキドキ。

ここでしばらく時間をかけて趣旨説明をします。
これを読んで、そういうことなら私も食べものの話をしに行きたいな、
と思ってくださったらば、あなたもどうぞスタジオへお越しください。
by natsuko kawakami






45
)息子と食。

ある程度、好んで料理をしていると公表しているおっかさんの子どもあるあるではないでしょうか。

「○○くん/ちゃん、毎日おいしいごはん食べられていいねえ」と言われる。
宅の息子、大体そういう時、苦笑いしている。

あ、いや、小さい頃は天使の笑顔で「うん!」なんつってたなぁ(遠い目)。
おかげさまで彼は今年13歳になるわけですが、
「おっかさんが食に一家言持っているとロクなことはねぇ」、を
オトナのたしなみとしてグッと呑み込んでの「苦笑い」であろう。

私は子どもに、台所責任者として何ができるか。
諸事情で安静を強いられていた妊娠生活中、暇に任せて考えていた。
私の場合、それは寝食を整えることだろうという結論に至った。
当時読んでいたのは幕内英夫『粗食のすすめ』(東洋経済新報社)や
『じょうぶな子どもをつくる基本食 子どもレシピ』(主婦の友社)。
今も大変影響を受けている。




 

まずは寝ること。
食いしん坊の私ですが、食べるよりも寝ることの方が大切だと思っています。
眠たいなら寝る。本当に疲れているなら無理せずに何か軽くつまんで寝て、先に体を回復させてから、しっかり食べる。

1日のスケジュールが許す限り早く寝る。
息子が早く寝るためなら、ワタシ、なんでもします。
もう、そのくらい、睡眠を大切に考えている。
彼が日々1分でも早く寝るために、私の生活をかなり変えた。
おかげでというか、私の睡眠もとても充実したものになった。

さて、よく寝た。
次は何を食べるか。

朝は五分搗きのごはん。
油で焼いて塩胡椒した野菜か、塩で締めた野菜。
卵と無えんせきのソーセージと果物。
野菜と果物は季節による。

夕食はやはりごはんに一汁二菜。
暑くなると汁物をしないので別のものに置き換える。
月曜、水曜、金曜は肉料理、火曜と木曜は魚料理と決めている。

豆ご飯。家族全員大好物だ

 

子どもが食べやすいように、という作り方をしないようにしてきた。
子どもが苦手としているものを食べたときに「えらいねえ!」と言わないようにしてきた。
苦手な野菜を一種類だけ申請させ(ナスだそうだ)、それ以外は認めないようにしている。

それもまあ、息子の場合、元来の食いしん坊気質のなせる技だ。
いまだに行儀は悪いが、ありがたいことになんでも食べる。
生卵の白身で喉に違和感があるらしいので、そこを避けたらいいだけだ。
魚も骨をつけたまま出すし、食べ物に絵を描いたりもしない。
「僕これ嫌いなんだよね」、と言うのに耳を貸さずに、
大人の分前とは少し量を減らしつつも食べさせる。

なんでもニコニコ食べていたのに、ある日偏食気味のお友だちの真似をして
「ぼくこれきらい」と言い出したときは
食べ物を「嫌い」、と言うのはカッコ悪いことだと言って聞かせてきた。

まあ、スパルタですね。
そりゃ苦笑いもしますわ。


コロッケサンド。パン屋さんでも大体サンドイッチの棚はチェックを欠かさないのだが、家で作ると最高にうまいのは調味料や具を調整できるから

 

日々の食事というのは楽しみであってもいいけれど、同時に「訓練」だと思っています。
大好物の日でも、そんなに上がらないメニューの日でも。唐揚げでも、鯖の味噌煮でも。
出された食事を、材料を作った人と食事を作った人に失礼でない食べ方で、毎日毎日ありがたくいただく。
そういう訓練だと思っています。

それを私の台所で続けていけば
彼の長い人生で、自分できちんとした食事を求める力を養えると思っています。

ちゃんと寝ること、ちゃんと食べること!
いつまでも彼が食事をするところをじっと見ていられるわけではない。そんな日々は早々に終わるでしょう。
その時、彼が何を選んで食べるか。
うーん、大丈夫かな。けれど信じる。そうやって日々の寝食を整えるているわけです。


フロランタン。こういう焼き菓子も家族の好物。子どもが小さい頃はお菓子を作るときは動物性の食材を避けていたが、一周回って今はありになった




あとは昼食と外食ですね!
学校給食や週末の外食、お友だちと部活の帰りに食べる軽食。
私の手が及ばないところで食事をすることは多々ある。
それも、私の訓練をこなしていれば、多少のことは目をつぶることができるってぇわけなんです。

こういうのです!!!こういうお買い物は夫担当にしている。私は見ない。見るといろいろ言いたくなるから

 

なんというか、いろいろ勉強してしまうと、知らなくていいことを知ってしまう。
それをどこまで子どもに教えるべきか、常に考えている。
知らなくてはならないことと、知らなくてもいいことがあるからだ。
知らなくてはならないことは教えるけれど
私が私の人生を生きてきて、好んで学んで得たものを、彼に押し付けるのはどうだろう。
私だってそれを知ることで、ありがたくもちょっと苦しくなったな、と思うことも少なくないのだ。

私の人生は彼の人生とはちがうのだ。彼は彼の尺度で学べばいい。

ま、まずは今日も早く寝て
明日おいしく食べましょう。

稲荷寿司も家で炊いて好みの味にできるのがいい。普段は薄味が基本だが、稲荷だと揚げも酢飯も濃いめ

 

次のリアル講座は9月に「味噌と麹」をテーマに行う予定です。
ただいま日程大検討中!
平日がいい~!週末がいい~!
9月〇日は行けないからそれ以外で! などなど、、
積極的かつ切実なリクエストがあれば、早めにご一報ください。





つづく・・・
>>>次回は6/21頃に更新予定です。


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●写真・文/川上夏子

■■プロフィール■■

●川上夏子(かわかみ・なつこ)
1974年福岡生まれ。グラフィックデザイナー。ではあるけれども、著作があり、スタイリングもやるし、料理家さんの日雇いアシスタントもやります。
日々マッキントッシュの前に座りながら、頭の中はほぼ「何を作り何を食べるか」でいっぱいであります。
アラフィフの入り口に立ち、いよいよ人生の総まとめとして「食べものの作り手」として本格的に仕事をしていきたいと考えています!趣味は健康管理。
[著書
『小夏を探す旅』(2020年)
『ぼくらのいえができるまで できてから』(2016年)
『福岡のパンとお菓子の小さなお店』(2013年)
『福岡のまいにちごはん』(2012年)