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column

June 09, 2022

シャッター音を傍らに
scene30 【6月】待ち時間の先に

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

由布岳麓を走る




【6
月】待ち時間の先に


由布岳麓の道は草原に囲まれ、この道を走るには最高の季節になったなあと思う。

この道を見下ろす場所で午後から由布岳の撮影をしてみようと思いながら湯布院へと向かう。
午前中は鶴見岳の山頂にいたのだが、ガスに覆われ何も撮影できなかったのだ。
まあそんなこともあるよなあと思いつつ、
2時間山頂で待ち続けて何も撮れなかったのは結構ショックでヘロヘロの気分。
麓は晴れているものの由布岳山頂はまだガスの中。

そこでお気に入りのお店で気を取り直そうと、金鱗湖そばの喫茶店へと向かったのだった。
グレゴリオ聖歌の流れる店内で、目の前に生けられた花々を眺めながらしばらくコーヒーゼリーをいただく。

うん、なかなかいい待ち時間だなあ。


金鱗湖そばの喫茶店にて



外に出て由布岳を眺めてみると、山頂はまだガスの中であるけれど撮影場所へと向かった。

そして狙っていた場所に到着し、カメラを持って車を出ておよそ5分後、
由布岳の山頂が姿を見せ始めたのだった。

しばらく撮影を続け、結果的にこの日はとてもいい撮影日和となったのだ。
あの喫茶店での待ち時間がなければ撮れなかったってことかなあと思いながら。


山頂が見え始め、雲影が山体に




今月の旅は待ち時間が長かった。

大分から宮崎へと向かい、次の日の早朝に桃源郷岬で海沿いのアジサイを撮影。
ここでもアジサイに太陽の光が届くのをじっと待っていたし、
その後に行った宮崎市民の森の撮影では市役所の許可が必要だったため、
手続きを済ませて許可証が発行されるまでのおよそ2時間、近くの公園で待っていた。

結果的にこの待ち時間がよかったのか、市民の森では到着後すぐの夕暮れの光で、
とても満足のいく菖蒲園を撮影できたのだった。

次の日は道の駅『なんごう周辺に咲くジャカランダの撮影。
これは昼間の光で撮影しようと思っていたら曇ってしまった。
うーん、待つかどうかと迷ったけれど、今月の旅は待ってばかりで結果的にいい方向になっていたので待つことに。

カツオ風味というカレーを食べたりマンゴーソフト食べたりジューシーオレンジ食べたり(食べてばかりだな)、
そんなこんなで4時間後、雲がなくなりいい光が射しこみ、こちらも結果的にいい撮影ができたのだった。

うん、よく食べたいい待ち時間だった。


南郷に咲くジャカランダ



次の日はえびのに宿泊し、先月曇っていて撮影できなかった霧島の御池へ。

今回は気持ちのいい朝の空気に包まれている。
この風景は要するに出会うまでにひと月待たされたということになるのだろうか。


見上げると南国のようなシルエットが


朝の凪、山頂が湖面に




毎月九州を巡っているけれど、すぐに撮影できることもあれば今月のように待ち時間だらけという時もある。
これらの時間をいかに心に余裕を持って楽しむか、ということもこれからの大きな課題だ。

そんな時にこのエッセイの原稿でも書いておけばいいものを、いつもサボって締め切りに間に合わず。

お互い待ち時間を楽しみましょう。


まるで絵のようだったホテルからの夕景

 




●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →