column
October 08, 2016
季節のうつわと皆敷
其の拾弐:神無月(かんなづき)
九谷 菊蝶文様 八寸平皿
金彩色絵花車文様 なます皿
印判 青海波 龍文様 紅縁 六寸平皿
皆敷:裏白(うらじろ)、ユズリハ、松
神無月
秋も一段と深まり始めました。
朝晩少し肌寒く感じられるこの季節になると、
食卓にも温もりが感じられるお料理が恋しくなります。
この時期に旬を迎える松茸は、ゆっくりと正味したいところですが
家庭では少々手が届きにくかったりしますよね。
であればせめてそんな雰囲気だけでも、秋を味わうのはいかがでしょうか。
たとえば、数種類のキノコたち。
これらを焼いて、かぼすをちょっと絞って頂くのも立派な秋の味覚になります。
そしてうつわにもひと工夫。
今回は基本の色を緑、黄色、茶色にして、ユズリハや松を添えました。
盛付けは一人分ずつ、それぞれ八寸の平皿に分けました。
平皿は、なんとなく「単品で盛付ける」と考えがちですが、
こうして複数の食材に葉っぱを敷き込んで、
この一枚に季節感を盛付けるという方法もあります。
皆敷では代表的な裏白、紅葉したユズリハに松、
それとカボスです。
ユズリハは唯一この時期だけとても綺麗な黄色に紅葉します。
裏白もこれから綺麗な葉っぱが出てきます。
旬のかぼすを絞って秋の香りを感じてみてください。
ー見て、香って、食べるー
これこそ器が最もイキイキと感じられる瞬間なのではないかと思います。
みんなで囲む食卓でも、盛付け次第では
各々が食べたいものを食べたいリズムで楽しむことができます。
自分のペースで焼きながら、そして会話を楽しみながら…。
食材、器、季節感、あしらい、会話、雰囲気…と、色んな要素が合わさって楽しい食事になります。
そういったことを少し意識して大事にすることが、私の伝えたい“皆敷”でもあるのです。
●写真・文/三嶋亜希子
■■プロフィール■■
『器と、そのまわり 杜鵑草(ほととぎす)』代表。骨董商。器コーディネーター。
幼 い時より両親の影響で骨董や山野草に囲まれた生活を送り、茶道、華道を学ぶ。短大卒業後、広告制作会社、広告代理店勤務などを経て、器コーディネーター へ。2013年より骨董商として始動。現在は骨董商でありながらも、皆敷(※)のスタイルを用いたテーブルコーディネート等、福岡を拠点に活動中。
◎webサイト:『杜鵑草』⇒ http://hototogisu.me/
(※)皆敷(かいしき)とは
器に盛る食べ物や、神饌(しんせん)の下に敷く木の葉や紙のこと。
山の葉や野の花を料理に添えて、季節感や清潔感を表すもので、日本料理の大切な特色の一つと言われる。