column
April 06, 2024
シャッター音を傍らに
scene48 【4月】九州桜前線に乗って
福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya
【4月】九州桜前線に乗って
今年の桜は一気に満開になったので一気に九州を巡ることになった。
毎年桜の季節はとても慌ただしいけれど、
今年は3月末に各地で満開を迎えたあと雨が数日続くという予報だったので、
集中して各地を巡らなければ撮影できないという状況だった。
ただ熊本の水上村だけが例外で、どういうわけか3月19日にソメイヨシノが満開となった。
慌ててすぐに水上村にある桜の名所、市房ダムに向かった(ヒマでよかった)。
市房ダムに到着すると、ここから望む名峰、市房山の頂上が白く雪化粧しているのが見えた。
その麓のダム周辺はピンク色。そしてものすごく寒い。見物の方々も震えながら桜を見物している。そして桜吹雪かと思ったら小雪が舞い始めたのだった。
かつて4月のくじゅうでマンサクと雪山を撮影した時は心ときめいて撮影した記憶があるけれど、
九州で桜と雪景色なんていうと、あまりに意外すぎてときめきよりも不安感の方が強い。
大丈夫なのかなあと。
まあもちろんきれいで貴重な風景ではあったけれど。
3月末、満開間近の鹿児島から本格的に桜撮影スタート。
5日間かけて福岡まで北上する予定。
桜前線に乗ったような気分で、いつものように各地で撮影しながらお花見。
しかもすべて一人花見。これはぜいたくなのか寂しいのか自分でもよく分からない。
おそらく楽しいんだろうと一人ブツブツ。
桜ばかり撮影しているとどうしても飽きてしまうので、
ホテルに戻ってから音楽を流して窓からの景色をしばらく撮影していた。
これはとてもいい時間。
宮崎での撮影を終えて大分へ。
久しぶりにルスカの仲間たちと合流。つい最近犬も仲間に加わった。
ラブラドールとプードルの子供で、ラブラドゥードルという犬種だそうだ。
どうせならラブラプードルでいいじゃないかと思うけれど、そう単純簡単にはいかないようだ。
瀬の本にあるドックランで2時間ほど犬と走り回り、撮影合間の気分転換。
そして夕方に豊後大野市にある『沈堕の滝』へロケハン。
次の日の午前中に撮影しようと思っていたのだが、桜はまだ5分といったところ。ちょっと早い。
そして次の日の朝6時半ごろ、天気は快晴、再び行ってみるとほぼ満開になっていた。
夜の間につぼみたちは話し合って朝に咲こうと決めたのだ。
あのカメラマンまた来るだろうしとかヒソヒソ言って(都合のいいロマンチックな推測です)。
そして滝に虹!
帰りに満開になった岡城へ。
5日ぶりに福岡へ帰ってきた。
次の日の午前中まで天気がもつというので、西鉄の新駅『桜並木駅』近くの桜並木を早朝から撮影。福岡市は満開宣言となったが、その日の午後から曇りはじめ、夜には豪雨となった。
満開になった日に散ってしまのだろうか。
夢の中のような九州桜前線追いかけ旅の日々が今年も終わった。
毎年恒例のあっという間の感動時間だ。
●写真・文/川上信也
■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami
■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →☆