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column

June 02, 2021

シャッター音を傍らに
scene19 【6月】 Come Rain Or Come Shine

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

雨の信号待ち




【6
月】Come Rain Or Come Shine


梅雨入り。

雨の日は撮影に出るのもうっとおしいけれど(今はマスクもあるし)、
およそ4、5年前のこと、雨の撮影ばかりしていた時があった。

僕はどちらかというと晴れ男と言われることが多いけれど、
僕自身の感覚ではそうでもなく、特に4、5年前はほんとよく雨に降られた。

くじゅうに行っても4回続けて雨ということもあったし、
雑誌の撮影で鹿児島に行った時は撮影などはメインの桜島が大雨で全く見えないということもあった。

その時は「桜島なんてみんな見飽きてるだろうからガジュマルの大木のほうがいいですよ」なんて
編集者に適当に説得して、桜島からガジュマルの大木に撮影対象を変えてしまったこともあった。
強引だったな。

そしてこんなに雨に降られるんだったら、
もういっそのこと雨をテーマにしばらく撮影してみようじゃないか、
と小さな決意をしたのだった。

まあ仕方なくではあったけれど。



水たまりをゆく

 

雨の撮影で大事なこと、カメラ用の防水グッズだったり、
濡れたレンズの対処法を入念に調べたりなどなど、
そんな写真家らしい準備はほとんどせず、まず準備したのは気分を盛り上げるための音楽だった。
雨の撮影にはとにかく気分が大事。

雨を歌った曲は集めてみると結構ある。
「Rain」という題名のだけでもThe Beatles, Madonna, The Corrsなどの曲を思いつく。
どれも大好きな雨の唄。

a-haの『Crying In The Rainもいいし、B.J.Thomasの雨にぬれてもなんてのも名曲だなあ。
B.B.King&Eric ClaptonのCome Rain Or Come Shineはかっこよすぎる。
邦楽では荒井由実雨の街を、スピッツあじさい通り、吉田拓郎ある雨の日の情景などなど。

こんな曲ばかり集めていると雨が待ち遠しくなる。



飫肥、城下町にて




そんな3年前のある日のこと、雨の奄美大島を撮影しようと思い立った。

奄美大島は何度か行ったことがあったけれど晴れの日ばかりだった(やっぱ晴れ男かなと)。
もちろんそれはそれで素晴らしい風景だったけれど、南国の原生林で雨を撮ってみたい。
天気予報で雨の日を調べて旅の計画を練っていった。

そして2泊3日の短い奄美大島、雨の旅が始まった。
飛行機から降り立った瞬間から雨の奄美大島。
レンタカーを借りて選んできた雨の曲をかける。
音楽だけで雨の感じ方もずいぶん変わってくる。
普通に見ればじめじめしてうっとおしい雨の日なんだろうけれど、
なんてすばらしい南国の雨だと感じてしまう。
そして撮影意欲も生まれてくるのだった。

雨音が大きな葉っぱに落ちる音、原生林のつややかな緑、雨宿りする鳥たち、
南国の雨は世界を生き生きと変貌させる魔法のようなものだった。



音符のようなヒカゲヘゴ

つややかな葉に落ちる音が心地いい

 

 

そして雨の撮影で大事なことは危険を感じるような大雨の時は撮影に行かないこと。

雷も恐怖しか感じないので撮影はしない。
あくまで心地よい雨音の中、傘をさして対処できる程度の雨での撮影に限定する。
無理せず車から眺めるだけでもいい。
そう決めてしまえば雨の撮影も楽しいものになってくる。
もちろんカメラ、レンズは防塵防滴。

 

しばらく車で雨宿り

 

とはいってもやはり待ち遠しいのは雨上がりの空。
「Come Rain Or Come Shine」

世の中もそんな繰り返し。

今はとにかく長雨の後の晴れが待ち遠しい。

 

雨上がりの高原にて

 

 


●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →