column
June 30, 2016
季節のうつわと皆敷
其の九:文月(ふみづき)
プレスガラス PINK
皆敷:里芋の葉と楓
文月
雨がしとしと降り続いています。
畑の山芋の葉っぱが雨で濡れてツヤツヤと深い緑色に見えます。
近寄って見ていたら、葉っぱの上で雨粒がコロコロと玉のようにすべり、踊ります。
一粒が落ちると、また一粒、そしてまた一粒と一緒になって
それが大きな粒となり…の繰り返し。
見ているだけで心がすーっと、そしてふっくら丸くなっていきます。
その昔、この雫を硯に落とし
思いを寄せる人への心をしたためるという習慣があったとか。
そんな話を小さな頃に聞いたなっと思い出します。
今回、器は大正時代の四角形のプレスガラスを合わせてみました。
ガラス越しに差し込む柔らかい光を雫に見立てました。
キラキラとした光は、ジメジメしたこの季節に涼やかさを感じさせさせてくれます。
手におさまった感じは、少し重量感もありしっとり馴染みます。
ガラスの生地の小さな気泡が混じっていたりするのは、
この時代の特徴でもあり、なんとも言えずよかったりします。
器と、葉っぱで涼を感じてみませんか。
●写真・文/三嶋亜希子
■■プロフィール■■
『器と、そのまわり 杜鵑草(ほととぎす)』代表。骨董商。器コーディネーター。
幼 い時より両親の影響で骨董や山野草に囲まれた生活を送り、茶道、華道を学ぶ。短大卒業後、広告制作会社、広告代理店勤務などを経て、器コーディネーター へ。2013年より骨董商として始動。現在は骨董商でありながらも、皆敷(※)のスタイルを用いたテーブルコーディネート等、福岡を拠点に活動中。
◎webサイト:『杜鵑草』⇒ http://hototogisu.me/
(※)皆敷(かいしき)とは
器に盛る食べ物や、神饌(しんせん)の下に敷く木の葉や紙のこと。
山の葉や野の花を料理に添えて、季節感や清潔感を表すもので、日本料理の大切な特色の一つと言われる。