想いにふれる メイドイン

今年の冬至は12/22(日)。暖かくして過ごそう

column

June 27, 2016

Minority Report>>>01-04
~コーヒーと器とパンのおいしい関係 ~




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福岡でモノ・コトづくりに携わる、むしろ拘る人たちと行なう
課外活動的コラムがスタート。

こんなこといいな、できたらいいな♪
そんな気持ちで、
いつもの自分をはみ出して、考え、つくるプロジェクトです。


<GUEST>
『コーヒーカウンティ』…森 崇顕

<SPECIAL GUEST>
『シニフィアン シニフィエ』…志賀 勝栄

<MEMBER>
ブーランジェリー『パンストック』…平山 哲生
うつわ屋『フランジパニ』…地蔵 俊一郎
モノ・コト・マガジン『MADE IN…』…伊藤 尚子



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先日、第1回目のマイノリティ・リポート「勉強会」を行ないました。

※これまでの「あらまし」はコチラをご覧ください。
Minority Report>>>01-01 はじまり
Minority Report>>>01-02 プロット:1
Minority Report>>>01-03 プロット:2
Minority Report>>>01-04 リポート


■■■REPORT:01■■■


[01]勉強会開始

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5月某日。

店休日の『パンストック』は早朝から活気づいていた。

東京から『シニフィアン シニフィエ』(※1)のオーナーシェフ・
志賀 勝栄氏を招いてのパンづくりの“特講”が行なわれていたからである。

前日の仕込みから始まって、今日の成形、焼きまで。
パンストックの平山さん、スタッフはもちろん、
『CITY BAKERY』の千葉 大介さん、加藤 耕平さん、『モロパン』の諸永 裕士さんなど、
「志賀さんに学びたい」と集まった他店のパン職人たちも一緒になってのパン作りが行なわれていた。


その傍らで、出来上がった実験的&創造的なパンたちと
珈琲焙煎士が淹れる数種類のコーヒー、
うつわ屋が用意した個性派な器たちとの理想のマリアージュを探す。
それが今回のMRのテーマでありミッションなのだ!

「なんとも楽しげで美味しそうなミッション♪」

という、ルンルン気分もつかの間、そこはある意味戦場だった。




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どんどん焼き上がるパン。
どんどん淹れられるコーヒー。
合せるうつわをかわるがわる試しながら、
すべてを同時進行で行なっていく。

それぞれに異なる味や香りや触感が存在し、
合わさった時に生まれるハーモニーやインパクトもまた違う。

さらに味わっているのは、五感に優れた食のプロたち。
あちらこちらで質問や意見が交わされる。

同時多発的コラボレーション。
充満する高揚感とライヴ感!

それらすべてをルポに収めるのは無理でしたので、
ここでは交わされた意見と自分たちの感覚を元にメンバーが選んだ
「ベストマッチ5」を発表させていただきます。





[02]5つのマリアージュを発表

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コーヒー:エルサルバドル シベリア農園 ナチュラル
パン:赤ワインとイチジク、ナッツのパン
うつわ:山脇将人(宮崎)…『銀彩抹茶碗』


森:この『エルサルバドル』はマイルドで後味がフルーティなので、香りの広がりが良かった抹茶碗を選びました。
地蔵:抹茶碗は口が大きく、(コーヒーの)香りがもっと逃げるかと思いましたがかなり感じました。なんというか…香りの出方がよかった。
志賀:カフェオレボウルとかもだけど、大きい器はアロマが独特になるね。
平山:フルーツもだけどナッツとか…コーヒーにいろんな味と香りがありますよね。合わせたパンにもナッツが入ってるから、結構味が強い同士。いろんな味が口の中で行ったり来たりして、賑やかな感じ。
伊藤:味も見た目も楽しくて、ホント、賑やかな取り合わせでしたね。





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mariage2.
コーヒー:ホンジュラス エスペランサ農園
パン:全粒粉のルヴァンバゲット
うつわ:鈴木環(笠間)…『粉引つぼみカップ』


平山:
パンは、ルヴァン(天然酵母)のみで作った、しっかりした味のバゲットです。香ばしさと甘味もある。
森:僕はこの“ルヴァンのみのバゲット”かなり好きでした。この『ホンジュラス』は酸味が前面に出てるコーヒーなので、こういう粉の味や酸味のしっかりしたパンが合うのかも。
伊藤:器がかなり小ぶりで、コーヒーの味や香りが締まって感じたというか…。
地蔵:打合せの時に平山さんが話していた「フランス人が蕎麦猪口でコーヒーを飲んでいるシーン」から、鈴木環さんのスタイリッシュな作品が思い浮かんだんです。そこから制作をお願いして間に合わせてもらった作品。陶器ですが、まるで磁器のような美しさもあります。
志賀:この、手の中に収まる感じ。利き酒のように集中できるな。
地蔵:環さんが酒器を得意とされていることもあり、まさに“利き酒”をしているように手にして頂けたらと。狙い通りで嬉しいです(笑)。





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mariage3.
コーヒー:ブラジル カピン・セコ農園
パン:正統派のカンパーニュ
うつわ:鈴木 環(笠間)…『粉引カフェオレボウル』


志賀:コーヒーは深入りでロースト感があるね。
森:この『ブラジル』は、1、2と比べるとボディがしっかりあって、焙煎が少し深めです。
平山:パンは酸味のある正統派のカンパーニュ。オーガニックの粉を使ってるから、粉の味も強いです。コーヒーはスタンダードなクラシックさを感じたので、ある意味「昔ながらの組合せ」になったんじゃないかと。
伊藤:いいですね、平山さんのやりたかった「原点回帰」にも通じるというか。あ、この器も環さんですね。
地蔵:はい。以前、伊藤さんと深草のはなさん(※2)と一緒に作ったカフェオレボウルです。
平山:この器、僕好きです。両手で包みこむ感じとか、まるまって香りを味わう感じとか…。
地蔵:香りが少しこもるんですよね。飲み口の薄さも特徴的です。口当たりがフィットしますよね。
伊藤:改めて、いい器でしたね。思わぬところで再評価!はなさんにも報告しないと(笑)。





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mariage4.
コーヒー:コロンビア サンホセ農園
パン:クランベリーとチョコのパン
うつわ:余宮 隆(天草)…『キュノワール 鎬 丸カップ』


地蔵:
このパン、側と内がすんごい違いましたよね。
平山:志賀さんならではの技ですね。このパンは志賀さんが作ったものです。外側の硬さと内側の柔らかさが絶妙で、志賀さんでないとできないパンだと思う。乳酸菌の生地の特徴も一番生きてた。
地蔵:デザートみたいでしたよね。中のしっとりさをより感じて。
平山:チョコとクランベリーって合うんです。糖分まったく入れてないんですけど、クランベリーの甘味が生地に沁み出て…、これ美味しかったな(しみじみ)。
森:コーヒーは『コロンビア』深煎り。今日の中で一番重たくて、赤ワインっぽさもあります。
地蔵:器は、余宮さんがここ1、2年で生み出したキュノワール作品。18~19世紀のフランスで人気を博したお尻の黒い(キュ・ノワール)は、古き良き時代が思い出されコレクターも多いと聞きます。
伊藤:「個性派チーム」という感じですね。それぞれ個性的なのに、うまくまとまってるという、なんというか…強いマリアージュ!
地蔵:はい。テロワールを大事にされるカウンティさんのコーヒーと、古き良き時代のパンの美味しさを大事にされるパンストックさんのパン。そしてこのキュノワールと、すごく良いマリアージュだと思います。
伊藤:テロワールはフランス語で「大地」を意味してるんですよね。今回の勉強会のキーワードでもありました。
平山:ワインでよく使う言葉ですが、原料の育った土壌や気候、自然環境等、バックグラウンドを総合して「テロワール」というんです。
志賀:土地の持つ“エネルギー”だよね。パンづくり、コーヒーづくり、器づくりと…どれもテロワールが大事だからね。





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mariage5.
コーヒー:エチオピア イルガチェフェ ナチュラル
パン:有機ハトムギのパン・ド・ミ
うつわ:城 進(伊賀丸柱)…『白磁縞蕎麦猪口』


森:
最後、このフルーティな『エチオピア』には、蕎麦猪口みたいな器を合わせてみました。
地蔵:この器は料理研究家にもファンのいる城さんの作品で、土っぽい磁器とでもいいますか、温かみのある磁器です。普段、陶器しか取り扱いのない『フランジパニ』ですが、そんな私たちが好きな磁器も、今回提案してみました。
平山:コーヒーはベリーの香りがしますよね。フレーバーというか、紅茶感があった。
森:今回の中では一番個性的な風味のコーヒーです。ストロベリーの香りがして、後味は甘く複雑。
伊藤:これ、実際にストロベリーを混ぜてたりするんですか?
森:混ぜてませんよ(笑)。豆の性質とか煎り方でそういった風味が出てくるんです。
伊藤:それだけでこんなにベリー感が!?すごいですね!合わせたパンは、タテ7cm×ヨコ5cmほどの小さなパン・ド・ミ。ごくわずかな、ほんのりした甘さが逆に印象に残りました。
平山:これも志賀さん作です。もちもち感がすごい!志賀さんだとここまでできるんだな、と。
伊藤:絵的な可愛さも際立ってました。撮影時、ファインダーから覗くと、「小ぶりで清楚な2ショット」という感じで。
地蔵:この器が唯一“石”を原料にしてる、陶器っぽい磁器で…ちょっと英国風ですよね。「蕎麦猪口で飲むコーヒー」のイメージに一番近いかもしれません。薄造りの磁器は、手にした際の温度や口当たりが、他(の陶器)とははまた違って感じられたのでは、と思います。


以上、5つのマリアージュでした。




[03]感想・総評

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志賀:パンは「こういうものが作りたい」というところから逆算して作るもの。今回やったことは利益追求とは別で、味がわかる人へのアプローチだった。僕は作りたいものしか作らないけど、「作り手としての緊張感では負けない」という自負がある。そういう意味ではパンストックのパンも、カウンティのコーヒーも、同じところがあるな、と。「やりたいことをやってるな」という味を感じた。

森:
粉の味のしっかりしたパンストックさんやシニフィアン・シニフィエさんのパンに、いわゆるコーヒーらしい苦みではなく豆の個性や酸を活かしたウチのコーヒーが改めて合うなと思いました。少し不安な部分もあったのですが…。パンが粉と酵母と水と塩だけ…という風にシンプルになればなるほど、コーヒーも焙煎の強さではなくシンプルに素材の良さを活かしたものが合ってくる印象です。チョコレートや甘さがパンに入ってくるに従ってコーヒーはしっかりしたものが相性良いですね。器でもコーヒーの味わいは大きく変わってきました。今回、パンとコーヒーと器、全部一緒に、だったので複雑で難しさがあり、楽しくもありました。それぞれのマリアージュを考えてさらにそれを合わせるとより完成度の高い組み合わせが出来そうです。また機会があれば参加したいです。

平山:森さんのコーヒーと、地蔵さんの選んだ器と(パンと)のマリアージュ、面白かったです。合わせ方であんなに味の印象が変わるんだ、と実感できました。ただ、師匠(志賀さん)にせっかく来ていただいたので、その機会を全力で生かしたいという思いも強くて…いろいろやり過ぎてまとめきれなかった。すみません(苦笑)。

地蔵:普段、お店では“見た目”の視覚情報で(お客さんが)器を選ばれることがほとんどですが、今回は全然違いました。味のスペシャリストに囲まれて、味覚、嗅覚、触覚と…情報のフィードバックがすごくてびっくりしました。視覚はほとんど入ってこないくらい(笑)。それから、生み出されるパンもコーヒーも「積み上げて来られた一流の仕事は、余計なものが無い」と感じられる、純粋な驚きがありました。選ばれた器もまた、そのようなものだったと思います。

伊藤:志賀さんの「パンは捏ねれば捏ねるほど個性がなくなる」という言葉と、森さんの「コーヒーの焙煎は、焼くほど味も強くなるけど、豆の持ち味はなくなってしまう」という言葉に通じるものを感じました。たくさん手を掛ければいいというものではない。一方的に力を注ぐことは、相手そのものの持ち味を失くしてしまうこともあるのだな~と。熱心さと、なんというか…謙虚さ?みたいなものをもってものづくりに向かうことが、そのものの持ち味を生かしてより良いものにできるコツなのかな、と思いました。



第1回マイノリティ・リポートの勉強会メンバー。左から伊藤尚子(MADE IN...)、地蔵俊一郎(フランジパニ)、森 崇顕(カウンティ)、志賀勝栄(シニフィアン シニフィエ)、平山哲生(パンストック)

第1回マイノリティ・リポートの勉強会メンバー
左から 伊藤尚子(MADE IN…)、地蔵俊一郎(フランジパニ)、森 崇顕(カウンティ)、志賀勝栄(シニフィアン シニフィエ)、平山哲生(パンストック)





※1…『シニフィアン シニフィエ』

日本一のパン屋激戦区といわれる東京・世田谷で、今、最も注目されているパン屋さん。名物はハード系のパン。オーナーシェフの志賀勝栄さんは、低温長時間発酵のパイオニアとして、多大な影響力を持つパン職人のおひとり。
詳しくは『シニフィアン シニフィエ』公式サイトをご覧ください →

※2…『深草』のはなさん
一 軒家カフェ『深草』のオーナー。2006年に伊藤の前職«シティ情報ふくおか»で、フランジパニと共同企画「私のうつわ展2006」を行なった際、プレゼ ンターとして“自分が使いたい器”を考案。その時、鈴木環氏とのコラボレーションで生まれたのが今回のカフェオレボウルだった。
<参考>
花田さん「私のうつわ展2006プレゼンター」 →
ひなた「私のうつわ展2006」 →


◎コーヒーカウンテイ 公式サイト →
◎パンストック 公式サイト(Facebook) →
◎フランジパニ 公式サイト →




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photo:MICHIKO  YAMAMOTO
text:NAOKO ITO




※今回のルポ『Minority Report>>>01-04』のスピンオフ的ルポも近日公開予定。
よりディープでマニアックな内容となりますので、興味のある方だけご覧ください(笑)。

※次回、第2回マイノリティ・リポートのテーマは「ハーブ」!
『Minority Report>>>02-01』サイトアップは7月上旬を予定しています。





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