column
June 21, 2026
レンズの向こう側
episode09 【6月】あの頃からビートルズ
一枚の写真から呼び起こされる
鮮やかな記憶
自然の風景、時には街、人々
レンズを覗いた時の思い…
それらを散りばめたフォトエッセイ
by kawakami shinya

朝日の空の公園に到着
【6月】あの頃からビートルズ
実家の松山へと帰省し、久しぶりに同級生と再会した。
小学校、中学校と仲の良かった女の子だ(同級生、今年55歳)。
懐かしい友達の名前が何人も出てきて、改めて同じ時代、同じ場所で過ごしてきたんだなあという思いが、
お互い何かしら強い仲間意識のようなものを生み出しながら会話は弾んでいった。
僕は高校生まで過ごしてきた松山で、これまで一度も同窓会のようなものに参加したことがないので、
懐かしさと同時にとても新鮮な気持ちだった。
そこで改めて「そうなのか!」と思ったことがある。
それは同級生の多くは定年という人生の一つの区切りが目の前に迫っているという話だった。
会社を去って退職金をもらうのか、それとも会社に残って年金支給まで働くのか、
などなど、とても現実的な話でそれぞれに様々な事情があるようだ。大変だなあ。
僕自身はというと、フリーランスなのでもちろん定年という概念そのものがない。
したがって考えたこともないので、55歳ってそういう年齢なのかと改めて思ったのだった。
ただ、僕の周りを見渡すとフリーランスの方が多いので、定年という話など当然のことながら聞いたこともなかった。
これからお店を始めようとしたり、新たな仕事に取り組んだりと、
どちらかというと新たなるスタートを切っているというイメージが強い。
僕自身もカレンダーの仕事を始めて6年目になる。
この仕事の前任者は80歳までの30年間続けてきた仕事なので、6年目なんてまだまだスタート地点だ。
フリーランスは不安定さが付き物ではあるけれど、いつまでも現役という感覚は貴重であるし、
大切にしたいとその時に強く思ったのだった。
今回の帰省では、福岡を午前中に出発し、久留米のアジサイを撮影し、
下道で大分県佐伯市へと向かって、そこで一泊して早朝に海を望む公園でアジサイを撮影し、
そのまま佐賀関からフェリーに乗って四国へと向かった。
先週は宮崎都井岬の撮影をしていたので、この2か月で2000キロ近く走っていることになる。
世の中では定年間近といわれる年齢でこのような暮らしを大変と感じるか、それとも楽しいと思えるか。
僕はとりあえずとても楽しいと思える側にいるので、とにかく健康第一にこのまま生きていければなあという思いが同級生と会話をしながら一層強くなった。
そして懐かしい女の子の顔を目の前に話をしていると、お互い若返ってくるような気がしてくる。
「しんやくんは何だか変わらないねえ、あの頃からビートルズ好きだったし」と言われて、
そうか、あの頃の続き、延長のような感じで今も生きているってことなんだなあと改めて実感しながら、
何百回(何千回?)と聴いてきたビートルズを再び車で聴きながら実家へと向かった。

近所の本屋の看板。何年もこのまま
●写真・文/川上信也
■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
現在は『西鉄カレンダー』撮影も担当。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami
■前シリーズ
*『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月) →☆
*『シャッター音を傍らに』(2019年7月~2025年7月) →☆




