column
September 02, 2025
季節の副菜と台所道具[第10回]
9月…嫁だって食べたい!秋茄子の揚げ煮浸し
旬の食材を使って
ひと手間かけて作られた副菜は
立派なごちそう。
便利・時短が当たり前の時代ですが
家庭料理と、消えつつある優秀な台所道具たちを
ちょっと見直してみませんか?

「秋茄子は嫁に食わすな」。このことわざ、由来が諸説ありますよね。
私が知っているのは憎い嫁に美味しい秋茄子を食べさせまいとする意地悪な姑目線の説。それと茄子は体を冷やすから冷え性の嫁をいたわる心優しい説。この2つは多分皆さんもご存知でしょう?
実はもう1つ、私も今回改めて知った説があります。それは「よめ」は「嫁」ではなく「夜目(よめ)」つまり「ネズミ」の事なんですって!美味しい秋茄子をネズミに食べられないように、が次第に「嫁」に変化したそう。いずれにしても秋茄子はそれだけ美味しいってことですよね。
第10回
9月…嫁だって食べたい!秋茄子の揚げ煮浸し
30年ぐらい前か。地元の金物屋のおじちゃんから
「天ぷらを揚げるのに1番いい鍋、何か知ってる?」
と尋ねられたことがある。
私は即座に「銅!」と答えたのだけど、おじちゃんはニンマリしながら首を横に振り、
「砲金って知ってる?」とまた尋ねてきた。
『砲金(ほうきん)』、知ってますか?
私はそれまで全く知りませんでした。
砲金は銅が約90%、錫が約10%の合金です。青銅とも呼ばれるそうです。
昔、大砲の砲身にも使われたことが名前の由来なんだとか。
とても強く、熱伝導率が良く、蓄熱率も高い。揚げ物には最高です。
揚げ物の時、熱伝導率はとってもとーっても大事。
特に天ぷらはその素材の味を楽しむために、短時間で中まで火を通さなくてはいけません。
そして蓄熱性の高さもとってもとーっても大事。
サクッとした天ぷらに仕上げるために、衣はキンキンに冷やして小麦粉のグルテンの発生を抑えるのですが、
冷たいネタを油に投入するのですから油の温度は一気に下がります。
蓄熱率が高い砲金なら急激な温度変化を最小限に抑えられるし、
その熱伝導の良さで火をちょっと強くすればまたすぐに油の温度を上げられる。
温度管理がしやすくて、揚げるのが苦手な人には持ってこいの鍋なのです!
ただ残念なことに10年ぐらい前に、この砲金の鍋を作る職人さんはほとんどいなくなってしまいました。
今出回っている鍋は最後の職人さんたちが作った鍋の在庫なのです。
私が金物屋のおじちゃんから教えてもらった頃なら直径24cmの家庭用の鍋が確か1万5千円ぐらいだったかな。
でも今じゃその4〜5倍はするかも。
技術の継承って、難しいのね。とほほ。
最近の天ぷら専門店では銅に錫引きをした鍋を使っているところが多いです。
熱伝導率を調べてみると、銅の方が砲金より熱伝導が良いので一見良いのですが、
中に引いてある錫は230度ぐらいで溶け出すので油の温度が上がり過ぎないよう、気が抜けません。
お手入れもしなくちゃいけないしね。
銅を使いこなす自信がない人は・・・鉄の鍋がオススメかなぁ。

■我が家の砲金の揚げ鍋
直径が24cm、深さ6cm。厚みはなんと4mm!銅鍋だと厚さはだいたい1.2mm〜2mmだからかなり分厚いです。もちろん重い。銅鍋と違って緑青が出にくく、変色しにくいので扱いが楽。
■□■秋茄子の揚げ煮びたし■□■
【材料】
●小茄子 10〜15本(普通の茄子でも可・1〜2本)
●揚げ油 適宜
●熱湯 適量
●めんつゆ 茄子がかぶるぐらい(出汁1/2カップ強 醤油大1:みりん大1)
【作り方】
①小茄子のヘタの付け根あたりに包丁で1周切り込みを入れ、ガクの長いところをカットする。
火の通りを良くするために実の部分に2mm幅程度の切り込みを入れる。裏も同様に。
②めんつゆを作る。
出汁7:醤油1:みりん1の割合で鍋に入れ火にかける。
沸騰してみりんのアルコールが飛んだら火を止める。
※常備菜として数日漬け込む場合は、出汁を少し多めに入れ、漬け汁を薄めておくとよい。
③小茄子を素揚げする。
火が通ったらザルにあげ、上から熱湯をかけて油抜きをする。
耐熱の保存容器に並べ、上から熱々の②をかけてしばらく置く。

火の通りをよくするのと漬け汁が浸透しやすいように切り込みを入れる。2mm程度の間隔で。

小茄子のヘタはそのままでOK。普通サイズの茄子の場合は、ヘタを落とし、縦半分にする。食べやすい長さ4〜5cm長さに切って皮の側だけに同じように切り込みを入れる。

お湯を沸かしながらめんつゆを作って、茄子を揚げる。そのまま油ぬきできるよう、揚げた茄子を乗せるザルを横にセット。手間がかかる料理ほど段取り良く。

練り物や油揚げなどを油ぬきする要領で。この一手間をするかしないかで料理の味が変わってきます。油抜きせずにそのまま漬け汁に入れても大丈夫だけど、した方が断然美味しいです!

時々上下を返して満遍なく味を染み込ませましょう。粗熱が取れたら冷蔵庫へ。常備菜としていただくもよし、素麺などのトッピングにも。

小茄子を使う時は皮を剥かないので崩れにくく仕上がりが綺麗。おもてなし料理にもぴったりです。油抜きしているので、さっぱり美味しくいただけます。
つづく・・・
>>>次回は10/2頃に更新予定です。
●文・写真/高木尚子
■■プロフィール■■
●高木尚子…家庭料理愛好家
20代から約30年間、料理研究家・桧山タミに師事。
『97歳料理家桧山タミ先生の台所おさらい帖』(文藝春秋/2023年発行)で料理を担当。
2023年博多大丸で開催の『桧山タミ台所展』企画・主催メンバー。
雑誌にレシピ提供、不定期に料理教室開催。3児の母。




