column
September 01, 2025
レンズの向こう側
episode01 【9月】 カメラ選びの原点
一枚の写真から呼び起こされる
鮮やかな記憶
自然の風景、時には街、人々
レンズを覗いた時の思い…
それらを散りばめたフォトエッセイ
by kawakami shinya

■初秋のくじゅう坊がつる
初めて購入したNikonのカメラで撮影した一枚。そして初めて気に入った一枚!。[1998年撮影]
【9月】カメラ選びの原点
本格的に写真を始めたのは20代半ばの頃。もう30年近く前のことになる。
当時の僕は大分県くじゅうの山小屋での仕事が始まり、周囲を大自然に囲まれての生活が続いていた。
そんな非日常的な日々を過ごしていると自然風景を撮影してみたいという願望が芽生えるのは当然の成り行きであって、その撮影願望は日に日に強くなっていったのだった。
もちろんそれがこの先お金になるかなんて考えはこれっぽっちもなく、
あの頃の僕はとても純粋に撮影願望を抱いていたのだ(と涙ぐむ)。
そこでやはり欲しくなったのは一眼レフカメラ。
当時の僕にはとても高い買い物だったけれど、とにかく買うことを決断し福岡へと向かい、お店のカメラコーナーへと直行。
そこで一体どのメーカーにすればいいのやらと迷っているときにふと思い出したのが、
学生の頃に見た『マディソン郡の橋』という映画。
主演のクリント・イーストウッドはカメラマンの役で、Nikonのカメラを使っていたのだ。
橋のたもとでレリーズを押す姿がとてもかっこよかった。Nikonに決定。
それからNikonのカメラで15年ほどカメラマンとしての経験を積んでゆくわけだけれど、その間にどうして僕がNikonを選んだのか何度も聞かれた。
おそらく聞いてくる人たちは堅牢だとかシャッター音がいいとか、そんな理由を期待しているのだろうけれど、
『マディソン郡の橋』のイーストウッドが…、という話をすると、
拍子抜けしたみたいに「あー、あのエロい映画ね、フフッ」と失笑されることになる。
そしてイーストウッドみたいにかっこいいねとは誰一人言ってもくれないし思ってもくれない(悲)。
初のカメラ選びの原点がエロい映画といわれるのも何だかなあという感じだったけれど、その後NikonからFUJIFILMに替わったのでこの話をする機会はなくなった。
そして30年ほど経った今、そんな原点もなかなかかっこいいじゃないかと思っている。
年が熟したってことだろうか。なのでエッセイのスタートは久しぶりのこの話で。
なんの役にも立たない無駄話ではあるけれど、当時そのNikonで撮影していた美しい、くじゅう坊がつるからの写真をどうぞ。
レンズの向こう側にはいつもくじゅうの山々が広がっていた。
ちなみにイーストウッドが使っていたのはNikonFという名機。
僕のはNikonF50という超庶民派の普及機でした。
●写真・文/川上信也
■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
現在は『西鉄カレンダー』撮影も担当。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami
■前シリーズ
*『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月) →☆
*『シャッター音を傍らに』(2019年7月~2025年7月) →☆




