column
July 16, 2025
シャッター音を傍らに
scene60 【7月】 笑顔の先に
福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

ハマユウ咲く日南海岸にて
【7月】笑顔の先に
熊本県の荒尾干潟で夕焼けを撮影していたときのこと。
干潟のすぐ裏に住んでいるというおじさんから声をかけられた。
「どこから来たんね」から始まっていろいろと会話は弾み、
この海岸ではサクラガイの貝殻を時々見かけるということで、砂浜を探してくれて
サクラガイの貝殻を僕に手渡し、猫と共にいい笑顔で裏の自宅に帰っていった。
ほんの数分の出来事だったけれど、普段一人での撮影がほとんどなので、
見知らぬ人とのささやかなこういった笑顔の会話はとてもうれしい。

夕焼けの荒尾干潟とおじさんの後ろ姿
翌日は佐賀へと向かい、とある呼子の展望所にある小さな販売所で、
『芋ヶ枝餅』というものが売られていた。
そこのお姉さんに「芋が枝餅って何ですか?」とお聞きすると、
「兄さん大宰府の梅が枝餅って知ってるやろ、その芋版ってこと。ハハハッー」といい笑顔で返してくれた。

佐賀県加部島をゆく
また途中立ち寄った電器屋さんのレジでは、サービス券を見た店員のお姉さんが
「えーと今日は何曜日でしたっけ」と聞いてきた。
「えーと、何曜日かな。僕も分からないなあ」というと、
「今日はいったい何曜日なんですかねー、ハハハーッ」とこれまたとてもいい笑顔を見せてくれた。
そして天草の道の駅の食堂ではおばちゃんが
「今日のサービス、スイカつけとくね」と小皿にスイカをつけてくれた。
どれもほんの数秒のやり取りだけれど、
その日撮影した風景をほんのり明るく彩ってくれている。

日南海岸 朝焼けとライオン岩

お気に入りのアコウの巨木

石波海岸で朝の波音を

立石山から糸島市幣の浜
つい先日は、一緒に仕事をしている編集者サワさんと大分県のとあるお店の取材だったのだが、
僕がお店に入るなり女性店員の方が「えー、〇〇〇さんみたい!」と声をあげたのだ。
とあるイケメンロックスターの名前だったので僕はちょっとたじろぎながら戸惑っていたけれど、
サワさんは「そんなわけないでしょうが」と大笑いしていた。
まあほんとに似ていたらこんなに笑えないだろうからね。
ギャップが大きいほど大笑いできるのだ。
この出来事のおかげでこの旅取材は笑顔に満ちた忘れられない旅になったのだった。

山頂に大きなブランコがある伐株山
このように笑顔は笑顔を呼ぶ。
日々のささいな出来事で笑うことができれば、それがさらに増幅してゆく。
なので僕は撮影中もできるだけ笑顔を忘れないように心がけて行こうと思っている。
ということで、この連載も笑顔で終わります。
長い間どうもありがとうございました(笑)。

福岡市奈多海岸で夕暮れを迎えた
2019年7月から6年続いた『シャッター音を傍らに』。
感染症の流行等、閉塞感で息苦しい時期も、心和らぐ風景を届けてくれました。
scene60で区切りとして、秋から新シリーズを予定しています。どうぞお楽しみに。
【メイドイン編集舎】
●写真・文/川上信也
■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami
■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →☆




