column
June 20, 2025
シャッター音を傍らに
scene59 【6月】 6月の憂鬱
福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

満開の菖蒲園に朝日が届く 長崎県佐々町
【6月】 6月の憂鬱
6月という月はとにかく忙しいというイメージを山小屋勤務時代に植え付けられている。
くじゅうの山々にミヤマキリシマが咲き誇り、山小屋は連日満杯だったからだ。
当時の僕は6月に入ってからの2週間は早朝5時から夕方9時近くまでずっと働いていたように思う。
「6月の憂鬱」と命名していた。
あれから25年ほど経った今でもミヤマキリシマが咲き始めると変な緊張感がある。
後遺症ということだろうかこれは。
今はさらに混雑が増しているようだ。
当時登山は中高年がメインだったのだが、次第に若い人たちも大勢訪れるようになり、
そしてSNSの影響がすごく大きくなった。
花が満開という情報が流れると真夜中から駐車場が満車になることもあるそうで、
いろいろと問題も起こっているようだ。
カレンダー撮影という仕事もしている僕の立場からいうと、これ以上人を増やすことに加担していいのか、ということはもちろん考えてしまう。
そしてあれだけ人が集まって周囲が絶景だらけだと撮影意欲がなかなか湧かないということも大きい。
あまり知られていない場所やさりげなく出会った場所で
自分なりの絶景を見つけ出すことの方にはるかにやりがいを感じる。

夕焼けの美しさに思わず車を停めた

朝日が届き始める大浪池
これは風景だけでなく、人やお店の取材でも同じことがいえる。
お洒落なカフェやモデルのような人の撮影ははっきり言って楽だ(口には出さないけど)。
それがここは(この人は)どうやって撮影すればいいんだ?
と悩ましい場面は長年取材をしているとしばしば遭遇する(口には出せないけど)。
そこで力量が試されるわけで、どうにかしてやろうと必死にいいアングルを探す。
すると何度も経験するうちにだいたい何とか見つけられるようになってくる。
そしてこれが自分なりに引き出せたアングルという快感となる。
これと同じでくじゅうのミヤマキリシマを美しく撮るよりも、特にあまり知られていない場所を目指してしまう。
今年も6月の憂鬱を吹き飛ばすように九州を巡ったのだった。

石橋続く水路に菖蒲が咲く 熊本県玉名市

あじさい満開の集落に朝がきた 福岡県豊前市
まあもちろん久しぶりにくじゅうのミヤマキリシマ撮影に行ってみてもいいかなあとは思っている。
もしかするとこれが一番の6月の憂鬱の特効薬になるのかもしれない。

こちらは霧島のミヤマキリシマ。なんと僕一人だけだった。
●写真・文/川上信也
■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami
■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →☆




