column
May 21, 2024
シャッター音を傍らに
scene49 【5月】飛行機雲を追って
福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

鹿児島市上空
【5月】飛行機雲を追って
新緑の香りが心地いい。
宮崎にある綾の森で広葉樹に囲まれながら撮影をしていた。
ふと空を見上げると飛行機が2機、飛行機雲を空に描きながら飛んでいる。

綾町上空
ちょっと前まで飛行機雲なんて特に気にもしなかったけれど、
ある時上空をゆく飛行機がどこへ向かうのか気になって調べてみると(アプリ活用!)、なんとドバイ発シカゴ行きだったのだ。
そんなはるかなる未知の都市を結ぶ飛行機がふと見上げた空を行き来しているなんて、
それは当たり前のことだろうけれど、とても不思議に思えるのだった。
それ以来旅先で飛行機雲を見つけると撮影している。

筑豊上空

霧島上空

有明海上空
ここ数年は車で九州を巡る日々が続いているので、飛行機に乗ることはめったにない。
ときどきあの飛行機雲を描く飛行機そのものに乗って遠くの国へ行ってみたいなあと思ったりもするけれど、
そうなると仕事の都合をはじめ、いろんな事を調整しないといけない。現実的になってしまうなあ。
かつての僕はアジア放浪に出発して飛行機を乗り継いで乗り継いでトランジット、という時間が楽しくて仕方なかった。
それがこの頃の僕は新幹線の2時間でも飽きてくるし、
飛行機のあの狭苦しいシートで10時間近くなんてもう耐えられないなあと不安になったり、
これが年を重ねるという事なのだろうかとちょっと悲しくなる。
しかしあの当時の僕は旅先で飛行機雲を見ても何とも感じなかったし、写真を撮ろうとも思わなかった。
今の僕は飛行機雲を見つけると、うれしくなっていろんな想いを抱きながらシャッターを切る。
そして飛行機雲は夢を空に描いている、なんて適当なかっこいいことを考えながらこのコラムを書いたりしているのだ。
これはこれでとてもいい流れの中にいるのではとも思う。

丘への一本道をゆく
緑をかすめながら一本道をゆくと、初夏の香りに包まれた丘に到着する。
そこでしばらく撮影を続け夕暮れを迎える。
ふと見上げると飛行機だ。あれはどこ行きだろうか。
高度がかなり高そうだから遠い国行きだろう。
飛行機雲を追いかけるように眺めている夕暮れ時、なんていい時間!
でもやっぱり飛行機10時間は耐えられないだろうなあ。

南小国町上空
●写真・文/川上信也
■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami
■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →☆