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column

April 12, 2022

シャッター音を傍らに
scene28 【4月】 希望の春

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

満開の桜の下で




【4
月】希望の春


先月24日夕暮れ時のこと、福岡の桜満開は月末あたりだろうというニュースが流れ、
それに備えて体を休めておこうと部屋でゴロリと寝転んでいた。

するとスマホから撮影予定にしていた宮崎県西米良村の桜がすでに満開という情報が入ったのだった。
もう少し先と思っていたら南の方ではすでに咲き誇っているらしい。

桜の撮影はいつもながらタイミングが難しい。
気持ちを切り替えてその日の夜に出発。
西米良村までは福岡から4時間以上かかるので、
熊本あたりで一泊して、早朝に出発して西米良村を目指すことに。

春の夜の九州自動車道、ものすごい霧だ。
熊本手前から霧がかかったことなんてあっただろうか。秋ならまだしも春に。
途中玉名パーキングで休憩。
小さな一本の桜の木が霧の中満開を迎えている。
これが今年初の桜撮影となった。

周囲はぼんやり霞みの中。
トラックの灯りが瞬く中での幻想的なパーキングから桜撮影ははじまった。


霧の玉名パーキングにて





熊本を早朝に出発し西米良村へ。
九州道を南下してゆく。

人吉インターで降り山間の村へ。
天気は快晴で山々に霧がかかっている。

しばらく走ると道端にミツマタの群生が姿を見せ始める。
このミツマタが西米良村に入ったという合図となる。
ここはミツマタと桜が同時に咲くということで知られている村なのだ。


西米良村はミツマタと桜が満開



お昼過ぎまで西米良村を巡り、しいたけ定食でお腹を満たし、
それから北上しながら桜を撮影していった。

桜前線と共にというわけではないけれど、車窓には満開を迎えた桜が次々に映し出される。
もちろん桜ばかりではなく、くじゅうでは美しい夕焼けにも出会ったし、
ホテルの窓からはまだまだ冬木広がるが、森の先に根子岳がひょっこり見えていた。

のびやかでさわやかな春の風景が続いている。


飯田高原にて

ホテルの窓より




福岡にいったん戻り、一息ついてから北九州を巡る。そして再び大分方面へ(桜撮影はほんと忙しい)。


春の朝陽に包まれる岡城を撮影し、長湯温泉そばにある桜の名所へ。 
ここで仲間たちと合流し、広大な敷地の中でやきそばを食べた。
思えば桜撮影中はいつも一人でせっせと慌ただしく撮影しているので、
仲間とぼんやり桜を眺める時間がすごく新鮮に思えた。

僕はもともと桜はあまり好きではなかったのだけれど(花粉症の時季でもあるし…)、
この桜を通した陽射しの明るさは希望の光のように思えてくる。
なるほど春に希望という組み合わせはとてもありふれた表現だろうけれど、
それを実感したのはもしかすると初めてかもしれない。

具体的な希望はと聞かれても答えられないけれど、
とにかく「希望の春」と習字にしたためようと思ったくらいだ(もちろん書いてないけれど)。

『長湯温泉しだれ桜の里』で仲間たちと

 

再び熊本方面を撮影し、桜撮影のスタートだった玉名パーキングエリアへ。
あの霧の夜とは違って夕暮れ時の光に桜が輝いていた。

再び玉名パーキングにて




長い桜の旅はとりあえず終了。

とにかく前へ進んでいい写真が撮りたいという、
大いなる未来への希望を抱きながらの春の撮影だったろうか。

とはいえとても疲れたのでひとまず休息を希望。

糸島市の河川敷にて







●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →