想いにふれる メイドイン

予防が大事。うがい&手洗い頑張ろう!

column

February 26, 2022

シャッター音を傍らに
scene27 【2月】 トランジットなる時間

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

梅の満開を求めて南へ




【2
月】トランジットなる時間


今月は梅の撮影で九州を巡っている。

ただ寒気が何度もやってきて天候が不安定となり、僕の心もそれに伴い不安定だ。
梅の花も六分咲きからなかなか進まず、満足できる写真が撮れない日々が続き
鹿児島、宮崎には結局数日間滞在することとなった。

満開を待つ合間に



この待ち時間をどのように過ごしていくかが今月のポイント。
もちろん福岡に帰ってもいいけれど、片道4時間近くとガソリン代、かなり効率が悪い。
静かにホテルに滞在して時を待つほうがいいのではと思うのだ。
まるで次の飛行機が飛ぶかどうか分からないトランジットのような時間が過ぎてゆく。

考えてみれば旅先でのトランジットの時間はとても好きだった。
特にアジアの空港では乗る場所も迷っていたし、
飛行機が飛ぶかどうかさえ直前になってみないと分からなかった。
その危ういフラフラした不安定さをとても楽しんでいたのだ。

空港を散策して目に留まったお店に思い切って入ってみたり、
旅人に声かけられてしばらく話し込んだり。

そう思えば梅の撮影までのトランジット時間なんてとても楽しいじゃないかと思えてくる。
梅が満開になって天気が回復すれば梅ダッシュだ。
いやトランジットだから梅ジェットとでも呼んでおこうか。

この梅トランジットの間はもちろん真面目にロケハンしたり、来年以降の撮影場所を見つけたりしていた。


宮崎新富町にて古い梅株を発見



またハワイ料理屋を見つけてしばらく常夏気分でココナッツカレー食べたり、
古い喫茶店で静かに読書したりと、思えばなかなか充実したトランジットだったなと思うのだ。

もちろん仕事である梅の撮影がうまくいくまでは心の奥では落ち着かないこともあり、
ホテルでは夜明け前に目が覚めて窓からの風景をしばらく撮影していた。

夜明け前 鹿児島のホテル窓より



そして足止め三日目あたりで天気が回復し、
ある程度梅の開花も進んで梅ジェットとなったのだ。

都農町ではウォーキングコースになっている梅園を撮影。
その時に梅園の方に話しかけられていろいろと話が弾み、その方の軽トラの運転席を撮影させていただいた。

マニュアルギアが鹿の角だったのだ。
ちょっと使いにくい気もするけれど、その方なりの駆除された鹿たちの供養なのだろう。

 

都農町梅梅園にて

ギアシフト難しそうだ



鹿児島での撮影も無事に終了し、ホッとしながら福岡に戻ってきた。
いろいろうまくいかなかった今回の撮影ではあったけれど、
この不安定なるトランジット時間をこれからも楽しんでいければいいなあと思っている。

来月は菜の花ジェットだ。

鹿児島にて

 


●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →