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column

January 26, 2022

シャッター音を傍らに
scene26 【1月】 雪景色の中で

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

やまなみハイウェイも雪景色




【1
月】雪景色の中で


先月から雪景色を求めて移動の日々を送っている。

雪景色といっても九州なので12月は霧氷が中心となり、
今月からは寒波がやってくるという天気予報を聞くたびに雪化粧を求めて出かけている。

市内に雪が降ってくれることはめったにないので、どうしても標高の高いとこへ目指すこととなり、
そうなると本格的とはいかないまでも、ある程度の雪山装備が必要となってくる。

くじゅうの山小屋で働いていた20年ほど前は寒波がやってくるたびに休憩時間に犬と一緒に山に登り、
頂上でしばらく撮影して夕食の準備までに雪山を駆け下りていた(元気だったなあ)。

しかし年齢も重ねてきた今、あんな雪山撮影は絶対に無理なので、いろいろと対策を考えている。

 

早朝の阿蘇草千里にて




まずは暖かいインナーに加えて、ちょっと高価なダウンジャケット、そしてアイゼンなどなど。

もちろん昔から優れたものはあったけれど、およそ20年を経てかなり進化している。
ダウンジャケットは羽毛布団を着ているように暖かいし、アイゼンはなんとワンタッチ。

そしてさらに強い味方として電熱ジャケットというものがある。
バッテリー装着のジャケットで、スイッチを入れると埋め込まれた電熱線が温かくなるというものだ。
まるで電気人間だ。雪山によく行く人に教えてもらって購入したのだが、これはとても助かる。


「エビの尻尾」があちこちに

 

これらのおかげで何とか快適な雪山撮影を続けている。

そして今月は寒波がやってきたので、懐かしのくじゅう冬景色も撮影してきた。

車はもちろんスタッドレス装備で牧の戸峠へと向かい、そこから猟師山へと向かった。
霧氷の木々のトンネルが続く美しい冬景色。
そして頂上付近で太陽の光を待つためにしばらく待機。
そこで電熱ジャケットスイッチオン。

じわりと暖かくなってくる。

あの頃こんなものがあったらなあとしみじみ思い出していたけれど、
あまりにも寒いと犬のお腹に手を入れて温めてもらっていたことを思い出した。
隣にいないのが寂しく思えてくる。

そんなことを思い出していると、電熱ジャケットより
ポリ君のお腹のほうが温かったのではいかと思うようになってきた。
いやきっとそうだった。毛皮だったし。

技術革新も大切だけれど、やはり人の温かみ(いや今回は犬のか)を忘れるべきではないなあと、
雪山の寒さの中で実感したのだった。

やはり心の温かみも大事ですね。


くじゅう登山道より




先日の阿蘇もずいぶんと冷え込んでいたけれど、樹氷が続く遊歩道に青空が映え、
これはとてつもなく美しい光景だなあと思いながら夕暮れまで歩き続けていた。

この感激を何とか文章と写真で親しい人たちに伝えることができればなあと、
James Taylorの『You’ve got a friendを聴きながら今回のエッセイを書いている。

寒いとそんな気持ちが強くなるのだろうか。

まあこれは重ねてきた年も関係してるのかなもしかして。



真っ白な桜並木のような霧氷が続く

 

 


●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →