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column

December 19, 2021

シャッター音を傍らに
scene25 【12月】 気分転換に

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

日の出を待つ朝のひととき




【12
月】気分転換に


くじゅう飯田高原にある宿でこの原稿を書いている。

葉を落とした木々の姿が窓の向こうに広がり、その合間から三俣山が見えている。
とてもいいロケーションなので原稿書いている場合ではないような気もするけれど、
こういう風景の中でこそ原稿を書いてみるのもいいのではないかと思い立って部屋に留まっている。

なんせ締め切りにずいぶん遅れているし・・・。

窓からの景色は木々




今月は朝日の撮影が仕事のメインになっているので、
とりあえず様々な場所に出かけて日の出前からカメラを持ってウロウロしている。

朝日が昇るとシャッターを切り続け、とてもまぶしい太陽になった時点で撮影は終了する。
うまい具合に朝日が顔を出してくれればいいけれど、もちろんそんないい条件ばかりではない。

ここ数日は6ヵ所をめぐり、きれいな朝日がちゃんと顔を見せてくれたのは3か所。
打率5割と考えればなかなかの高確率だけれど、
まったく顔を見せずに時間が過ぎてゆく時の脱力感は結構つらい。

まあそんな時は気を取り直して朝日以外のいろんな方向を撮影しているけれど。

霧島連山を眺めながら日の出を待つ

川霧が立ち昇る南阿蘇村

若戸大橋

 

そして今日の飯田高原も朝日は出てくれなかった。
だからただいま結構落ち込んでいる。

部屋に戻ってチェックアウトまでまだ数時間ある。
窓からの木々を眺めながら珈琲を飲んでみたり、
音楽を聴いてみたりして何とか気持ちを切り替えようと試みている。

これからもこのような場面に幾度となく遭遇するであろうから、
こんな時の気持ちの切り替えは大事だ。

僕はもともと気分転換は苦手なので結構悩んでいる。
えーとほかには何すればいいのか、散歩でもしようかそれともボーっと風景でも眺めてみるか。

なかなか打破できないなあと諦めていた頃、この原稿の締め切りを思い出したのだった。
車に置きっぱなしだったパソコンを持ってきて、
とりあえず部屋のホットカーペットの上で書き始めた。
すると結構はかどったのでこれはいい気分転換になったのかもしれない。
締め切りに遅れてよかったなあほんと(編集長スミマセン)。


と、ここまで書いてみて気分もほぐれてきたので、宿を連泊することにした。
天気予報は晴れということなので。
連泊してどちらも朝日が撮影できなかったとなると、気分の落ち込みはダブルパンチとなる。

しかしまあとりあえず、今日は朝日を撮影できなかったおかげでこの原稿は書けたわけだ。
いい気分転換にもなった。



そしてここからは数時間後の次の日に書いている。
朝日はどうだったかというと、すばらしい朝の光景を撮影できたのだった。
ということでダブルパンチは免れ、いい締めくくりとなってあーよかったと一人笑顔の午前8時半。

高原が輝きはじめる

 

 


●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →