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column

September 08, 2021

いいにおいのする台所研究所
第30回 「栗時間」

ワクワク。

場所の名前は、「いいにおいのする台所研究所」。
ここで私が皆さんと食べものの話をするのです。
誰に気兼ねすることなく、
最初から最後までずっと食べものの話をするのです。

ドキドキ。

ここでしばらく時間をかけて趣旨説明をします。
これを読んで、そういうことなら私も食べものの話をしに行きたいな、
と思ってくださったらば、あなたもどうぞスタジオへお越しください。
by natsuko kawakami






30
)「栗時間」


母が栗ご飯を炊く季節になると台所のテーブルに転がっていた栗の湯掻いたの。
栗を剥いていたところ「ああもう疲れた」と最後の数粒をあきらめて、湯掻いちゃった感じの。
包丁で半分に切ってあるのをつかんで、スプーンでほじくって食べる。

栗といえば、これだ。



 

贅沢にタルトに仕込んだ栗やら、渋皮を残して甘い汁に漬けたのやら
そりゃあおいしくて特別な栗のお菓子はどれも大好きだけど
甘みも何もつけてないのにじんわりとうまいのが、栗の湯掻いたのだ。

私の台所では、栗は湯掻かずに蒸す。
その方がもっとモッサリとしてうまい。
朝起きてすぐ、20分ほど蒸したらそのまま蒸籠を放置。ゆっくりと冷ます。

栗を剥くと皮は硬いし、そうなると実も結構削らねばならない。
蒸して食べるとその手間がいらない。しかも皮と実の境目の無駄がない。
先の薄いスプーンを使って渋皮の内側ギリギリまで攻めるから。


栗は水に漬けずに乾いた状態でザクザクと剥く。ハサミが強力なので問題なく剥ける。剥いたら水に漬ける

専用の栗剥きハサミ。20年は使っている

 

早朝の誰もいない部屋で、流しに立ったまま、人肌になった蒸し栗を黙々と5〜6個いく。
1つくらいは先に虫に食われているからぺっと吐き出すが、蒸した虫の匂いすら愛おしい。
コロコロと栗の殻が散らばる。冬が来る前のリスみたいだ。

いや、もしや前世はリス?
生ゴミを管理している夫が薄いため息をついている。
栗の皮はコンポストでも残るそうだ。

この季節になると、家にどれだけ買い置きがあっても、店で出会うと一袋買ってしまう。
次どこでいいものに出会えるかわからない、貴重な一袋だからだ。
そうこうしていると、どなたかから「食べきれないので」といただいたりする。

この日は栗とジャコとバターソテーした原木椎茸を炊き込んだ



赤いネットに入った艶々の栗たちで野菜室が満たされる。
サイズや味を見て、どう料理するか決める。
外で買った加工された栗のお菓子のストックもある。


湯掻いたのが余ったので、白玉に混ぜて栗白玉



9月は栗のために、自分の時間をとっておくのだ。





つづく・・・
>>>次回は9/21頃に更新予定です。


前の記事を読む>>>『いいにおいのする台所研究所』



●写真・文/川上夏子

■■プロフィール■■

●川上夏子(かわかみ・なつこ)
1974年福岡生まれ。グラフィックデザイナー。ではあるけれども、著作があり、スタイリングもやるし、料理家さんの日雇いアシスタントもやります。
日々マッキントッシュの前に座りながら、頭の中はほぼ「何を作り何を食べるか」でいっぱいであります。
アラフィフの入り口に立ち、いよいよ人生の総まとめとして「食べものの作り手」として本格的に仕事をしていきたいと考えています!趣味は健康管理。
[著書
『小夏を探す旅』(2020年)
『ぼくらのいえができるまで できてから』(2016年)
『福岡のパンとお菓子の小さなお店』(2013年)
『福岡のまいにちごはん』(2012年)