想いにふれる メイドイン

予防が大事。うがい&手洗い頑張ろう!

column

July 05, 2021

シャッター音を傍らに
scene20 【7月】 様々なものに出会ってしまった日

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

木々からの光芒がまぶしい朝だった




【7
月】様々なものに出会ってしまった日


庭の濡れ縁の下にいくつもの穴が空いているのを見つけたのは、去年の梅雨の頃だった。

最初はアリの巣だと思っていたけれど、それにしては直径5ミリほどの大きな穴で、
しばらく観察していると何かが生活していることを発見した。

僕がのぞくとスッと引っ込み、
やがて黒い頭のようなものが現れて穴に蓋をするようにしてじっとしいている。
よからぬ虫だったら困るなあと恐る恐る観察していたのだが、
この虫、予想していた通りの虫だった。

僕の家にはやたらとハンミョウが多いのだが、
もしかしてハンミョウの幼虫ではないかと調べてみると、正にそうだったのだ。

成虫のハンミョウはとても美しい体をしていて、
僕が玄関を出ると前を前を飛んでい行く。

正に別名「ミチシルベ」だ。


僕は子供のころから昆虫や生き物が好きだったので、
これを発見した時は、共にこの家に暮らしている仲間なんだなあと共感さえ覚えていた。

ほかにセミやカナブン、アゲハチョウ、
クマバチなどなどがしょっちゅうやってくる。
そして猫たちも。

先日『かぐや姫の物語というジブリ映画を見たけれど、
鳥、虫、獣、草、木、花、それらが季節を連れてやってくる、
というような歌が流れ、うーん正にそうだなあと感激したのだった。



水源に散った花がたくさん浮いていた

久しぶりに出会ったキツネ



と、ここまでは楽しい生き物たちの話。
ここからはまったくやっかいな生き物たちの話になるので読む方は要注意。

先日、田舎の家に滞在中、台所でとうとう出会ってしまった。
足の多い結構大きな奴。そう、ムカデ。

僕は自分でもびっくりするくらい悲鳴を上げてしまった(一人でよかった)。

梅雨時のじめじめした季節だったからかもしれない。
映画のメッセージや感動などすっかり忘れて即退治してしまった。
これらが季節を連れてやってくるなんていってられないではないか。
うーん、共生って難しい。

そしてしばらくして冷静になってみると、
ムカデにしてみれば即退治してしまった僕は相当恐ろしい存在ということになる
(しかもそばにあったやかんで熱湯をかけた)。

彼にしてみれば(彼でいいのか?)、
自分の足いっぱいの姿を見て逃げてくれと願っていたのかもしれないし、
せめて嚙みつくくらいの抵抗させてくれと懇願していたのかもしれない。
確かにそうかもしれないが、いくらそう考えようとしても、やはり苦手なものは苦手だ。

しかし世の中にはいろんな方がおられるようで、
ムカデなんてまったく怖くないという人もいる。

その方は浮羽の田舎に住んでいて、やはりしょっちゅう家にムカデが現れるそうだ。
そしてヤモリのほうがよっぽど気味が悪いという。
ヤモリなんてとてもかわいいじゃんと僕は思うけれど、
吸盤の手足を見るだけで耐えられないらしい。

ならムカデの足はどうなるんだと言いたいけれど、
あんなもんパンと手ではたいたらあっという間に逃げちゃうじゃないかと。

僕はこの方の感性が特別なのだろうと思っていたけれど、
ヤモリの方がよほど気味悪いという方にその後数人出会った。
まったく信じられないけれど、世の中には改めていろんな感性を持った方がおられるのだ。



虹にも遭遇



写真の話にならなかったので強引に写真の話に持ってゆくと、
要するに写真に対する感性も人ぞれぞれで、
僕がいいと思っている写真も、ある人が見れば気持ち悪いと思うかもしれない。

まあそれが世の中を面白くしているということもあるだろうけれど。

今回はせめて美しい写真の数々をと思って選んだけれど、
こんな写真よりムカデの写真のがいいと思う人がもしかするといるのもしれない(いないことを願う)。
ただ、これらはすべて出会ってしまった日に撮影したもの。

さわやかな一日だった。あの瞬間以外は。



様々なものに出会ってしまった一日




●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →