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column

April 08, 2021

いいにおいのする台所研究所
第20回 「あなたが思うより健康です。」

ワクワク。

場所の名前は、「いいにおいのする台所研究所」。
ここで私が皆さんと食べものの話をするのです。
誰に気兼ねすることなく、
最初から最後までずっと食べものの話をするのです。

ドキドキ。

ここでしばらく時間をかけて趣旨説明をします。
これを読んで、そういうことなら私も食べものの話をしに行きたいな、
と思ってくださったらば、あなたもどうぞスタジオへお越しください。
by natsuko kawakami






20)「あなたが思うより健康です。」 

今回は、二十歳前の女性が歌う流行歌の中の印象的なこの言葉について、
台所という観点から考えていきたい。

なぜ彼/彼女は健康なのか。
前提として、彼/彼女が命を脅かされるような重病を抱えていないものとする。


まず、若さである。
若さというのは、貯金のようなものである。
人は生まれたときに得る若さという貯金を少しずつ切り崩して生きて行く。
まだティーンエイジャーである彼/彼女は、貯金という考え方そのものに気がついてない。
それは当然あるものとして認識し、これからそれがどんなふうに目減りするか知らない。

そして与えらえた環境としての健康である。
現代日本に住む10代の若者で、健やかな反抗期を迎えられているなら、
その保護者が彼/彼女の健康状態を維持していると考えていいだろう。

健やかな反抗期とは、
例えば保護者や教師や世の中に対してよろしくないことばを使ったり、
校舎の窓ガラスを割って盗んだバイクで走り回りたい衝動にかられたりするなどしながら、
補導・逮捕に至らない程度の高校生活を送ることだ。

「健やか」な反抗期を送る若者には、
その若者が健やかに暮らせるようにじっと見守る保護者がいる。

若者が保護者の元に生を受けた瞬間からずっと、日々健康に暮らせるように。
風邪をひかないように、丈夫な体になるように、
できるだけ虫歯などにならないように、太りすぎないように痩せすぎないように。

それは台所から。そして学校の給食室から。
食生活が健康を作る。

現代日本に住む10代の若者は、
家庭、またはそれに代わる愛のある保護施設に恵まれているならば、
本人が気をつけることなくとも「健康」というのは約束された前提条件のようなものなのだ。

問題はその後だ。
二十歳を超えるとゆっくりとその前提条件は崩壊する。

まず、若さの貯金が着々と目減りを続ける。
次いで、20年近く台所から見守ってきた保護者もその役割を離れていく。

若者は一人暮らしを始めたり、自宅で食事をとる回数が減る。
自分で食事を選ぶことが多くなる。
お菓子で食事を済ませてみる。
ダイエットに、または忙しさを理由に食事の回数を減らす。
食べ合わせや栄養バランスを考えない。学校給食などとうにない。

20代、働き盛り、遊び盛り。
そもそも食生活という地道で当たり前すぎるこの習慣の重要性に気がつくには、
20代というのは忙しすぎるのだ。
そして刺激もない。
生まれた時から変わらずそこにあった「健康」。

若さが貯金であり、貯めるどころか維持するにも
相当の意識が必要なのだと気がついた頃には30代の入り口に立っている。
特に女性にとっては子どもを身ごもり育むというその瞬間、
気がつけば貯金はうっすらと底が見えるくらいになっている。


さあ、健康ってなんだ。



 


説教くさくならないようにどうやって書こうかと数日もんもんとしておりましたが、
どうしようもねぇな、ってことで開き直って説教することにしました。
Adoさんの『うっせえわを聴いて、どうしてもお伝えしたいこの衝動は
おそらく老婆心というやつの成せる技でしょう。老婆ですよ、老婆。ひどくない?

ただ、これ、以前福岡市内の高明な栄養学の先生への取材を元にしているちゃんとしたお話です。
ちゃんとした老婆心なんです。
健康は食生活のみならず、さまざまな要素(特に睡眠とバランスの取れた運動ね)が不可欠ですが、
このコラムは台所からお届けしておりますので、食についてのみ言及しております。

『うっせえわ、新小6の息子がめっちゃ聴いてます。
健やかな反抗期を待ち受け、ワタクシ準備万端です。
こちとら毎朝一人でラジオ体操1と2と、みんなの体操までやってます。

さあ、どっからでもかかってきやがれ。




つづく・・・
>>>次回は2021年の4/20頃に更新予定です。


前の記事を読む>>>『いいにおいのする台所研究所』



●写真・文/川上夏子

■■プロフィール■■

●川上夏子(かわかみ・なつこ)
1974年福岡生まれ。グラフィックデザイナー。ではあるけれども、著作があり、スタイリングもやるし、料理家さんの日雇いアシスタントもやります。
日々マッキントッシュの前に座りながら、頭の中はほぼ「何を作り何を食べるか」でいっぱいであります。
アラフィフの入り口に立ち、いよいよ人生の総まとめとして「食べものの作り手」として本格的に仕事をしていきたいと考えています!趣味は健康管理。
[著書
『小夏を探す旅』(2020年)
『ぼくらのいえができるまで できてから』(2016年)
『福岡のパンとお菓子の小さなお店』(2013年)
『福岡のまいにちごはん』(2012年)