想いにふれる メイドイン

中秋の名月は10/1(木)、満月は2(金) じゃ!

column

August 26, 2020

シャッター音を傍らに
scene10 【9月】ひまで有意義なる夏庭の日々

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

庭に実ったザクロ前はカラスアゲハの通り道


 

【9月】ひまで有意義なる夏庭の日々


つい先日のこと、時計は夜の8時をまわったあたり。
いつものように濡れ縁に座って珈琲を飲んでいた(ひまな夏だ…)。

夕闇にアブラゼミの声が響き、藍色に染まった南の空にはさそり座の瞬きが見え始め、
コウモリのシルエットがパタパタと映し出されていた。

庭先の小さなジャングルはいつもの夏。

すると僕の足元を小さな虫がノソノソと横切って行った。
カナブンかなと思いながら観察していると、その虫はベランダの鉄柱に登り始めたのだった。

セミの幼虫!。これから羽化が始まるのだ。

僕はカメラを取り出し、じっくり観察させてもらうことにした。
セミの羽化を見るのは小学4年の夏以来となる。

9時過ぎには体の殻が割れ始め、成虫が姿を見せた。

そして静かに羽を乾かしながらゆっくり広げてゆく。

すると宝石のように美しい水色の羽が現れた。

光の具合によっては虹色に輝いている。

どうやらクマゼミのようだけれど、あの普段見慣れているクマゼミたちは
こんな神秘的な時間を経ているのかと改めて生き物たちの不思議を認識させられたのだった。

あのシャンシャンとけたたましい鳴き声が、いとおしい命の合唱に思えてくる。

11時過ぎ、ほぼ羽化を終え、抜け殻を残してさらに高くへと昇って行った。

 

羽が七色に輝き始める

 

 

ある日の午後、いつものように濡れ縁に座ってアイスを食べていた(ひまな夏だ…)。

すると足元に無数の穴を発見したのだ。
その数およそ20個(ヒャー!)。

しばらく見ていると幼虫らしきものが時々顔をのぞかせせ、
僕の動きを察知するとサッと穴の中へと引っ込んでゆく。何者だこいつは。

非常に不気味であったけれど、これらはすべてハンミョウの幼虫だと判明。
それからは毎日穴をのぞくことが日課となってしまった。
ダンゴムシなどが通りかかると襲って食べるらしく、その機会を一日中待ち続けているらしい。
あまり食事にはありつけないようで、僕と同じくひまなのかもしれない。

毎日玄関を開けるとハンミョウが数匹飛び立つ。
この濡れ縁の下で生まれ育ったということだろうか。

 

ハンミョウはすぐ逃げるので撮影は難しい!

 


ドライフラワー化したアジサイの中ではカマキリが虫を捕らえて食事中。

ふと足元に目をやるとバッタと目が合った(たぶん)。
こいつは庭に植えたバジルを食べている現場を目撃してしまったので要注意だ。
間抜けな顔して笑っている。

庭に実ったザクロを撮影していると大きな虫が飛んできた。
おそらくカブトムシのメスではなかろうかと。
どこかの家から逃走中なのかもしれない。

 

カマキリの卵は壁のあちこちにある

バジル好きのバッタ

昼間に飛ぶカブトムシは初めて見た

 

 

そしてお盆の夜、いつものように濡れ縁に座って星を眺めていた(ひまな夏だ…)。

お盆の夜空といえばペルセウス座流星群だ。
毎年この日の前後はくじゅうで流れ星を一晩中撮影するのが楽しみとなっていたのだが、今年は濡れ縁からだ。
果たして福岡市内の住宅街から流星は見えるのだろうか。

すると続けざまに2つの流れ星が見えたのだ。あわてて三脚を持ってきてカメラをセット。
そして15秒ほどのシャッタースピードでしばらく撮影。
テレビで『となりのトトロが始まったので自動撮影に切り替え、
その後はほったらかしで200枚ほど撮影。

そしておよそ2時間後に確認してみると、
おー、1枚だけ映っているではないか。

背景にくじゅう連山や大自然が広がっているわけでもなく、
庭のささやかなる木々と隣の家の屋根(ソーラーパネル付き)と絡み合う電線と電柱の向こうに見える流星。
これはこれで都市の夜空に広がる大自然の摂理を表現した貴重な一枚ではないか。

しかもトトロを見ている最中の流れ星なんて感慨深い、と一人喜ぶ今年の夏。

 

庭から流れ星を撮影できたのは初めて。


こんな感じでひまで有意義なる夏庭の日々は過ぎてゆく。


 

●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →