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column

July 06, 2019

シャッター音を傍らに ~福岡⇔くじゅう白丹~
scene01 【7月】 大切な場所

福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by shinya kawakami

久住高原 夜明けのドライブ

【7月】 大切な場所


福岡市内から久住高原まで車でおよそ3時間半。
ここ数年、この道のりを何度となく往復している。

もともと、くじゅう坊がつる麓の山小屋で働いていた頃にカメラを始めたということもあり、
くじゅうは写真生活の原点のような場所でもある。

福岡では様々な仲間たちと関わり合いながら人々を撮影し、
お店を撮影し、料理を撮影し、街、海を撮影し、ときどき猫を撮影しているけれど、
その感覚の拠り所がくじゅうの大自然といったところだろうか。

かつてカメラ雑誌で僕が取材されたとき、
「くじゅうを母に 福岡を父に持つ写真家」と紹介されたことがあった。
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う、とかなんとか。

うまいこと言ってくれたなあと今さらながらに思う。
どちらもインスピレーションを得る大切な場所。

シャッター音が傍らで響くたびに心が豊かになってゆく。
その感覚から生まれた一枚で多くの人たちの心を豊かにしてゆくこと、
きっとこれが写真家としての大切な仕事だろうなと思っている。

 

お気に入りのいつもの場所で日の出を迎える

 

モノづくりを手掛けるルスカファクトリーという僕を含めた3人の会社が、
くじゅう連山を望む竹田市白丹(シラニ)を
福岡に次ぐ拠点として活動を始めて2年目となる。

白丹はルスカ代表のヤスタケさんのご実家で、
母屋の隣にある元郵便局の古い建物を
リノベーションして(総額3万円)時々足を運んでいる。

僕はここへ来るたびに夜明け前の久住高原を車で走ったり、山に登ったり、
竹田市内まで足を延ばして知り合いに会ったりしている。
(要するに仕事はほとんどしてない!)

 

「白丹温泉ふれあいの湯」から徒歩2分、ここがルスカファクトリー久住での拠点

 

白丹から車で15分ほど走ったところに、納池公園という場所がある。
集落の片隅にひっそりと佇み、多くの人には知られていない小さな公園だ。

神社を中心に湧水池が広がり、その周りを杉、タブ、カシなどの古木が繁る。

入り口の説明によると、南北朝時代に始まり、
明治には東京の浅草、京都の嵐山に並んで太政官制公園に指定されたとある。
よく分からないがすごく由緒正しい公園のようだ。

浅草や嵐山と違っていつ行ってもほぼ誰もいない。

 

 

鳥居を抜けると木々、空、雲を映し出す湧水地が広がる

 

先日は仲間3人でホタルの撮影に行ったけれど、
全部で4人しかいなかった(要するに僕ら以外にお1人だけ)。

周囲は街中では決して経験することのない漆黒の闇となる。

目の前の道もライトなしではまったく見えず、
誰かとすれ違っても分からないので非常に怖い。
しかし8月まで蛍が飛ぶという不思議な場所でもある。

そしてこの公園の大きな魅力は晴れた日の朝。

木々の合間から光が射し込み、水面は澄み切った大気を通して空、雲を映している。

まるでどこか知らない遠くの国の大自然の中に身を置いているような感覚だ。
古木に囲まれる光あふれる湧水池、知られざるパワースポットといえるだろうか。

傍らに響くシャッター音さえも神々しく感じられる。

 

 

 

目の前の森を朝の光がすり抜けてゆく

 

このような場所で僕は写真の力を充電するように時間を過ごし、
再び福岡へと戻ってゆく。

そうすると不思議と街の魅力が新たに見えてくるような感覚になる。

 

久住から戻ると、福岡の何気ない光景も詩的に思えてくる

 

 


●写真・文/川上信也
 

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →☆