column
December 20, 2018
ひとしずくの台湾 ーMade in Taiwanを探しにー
drop06 阿里山で美しきご来光
福岡市在住フリーランスライターが綴る
「Made in TAIWAN」をテーマにしたアレコレ。
仕事でもプライベートでも、何度でも訪れてしまう台湾の魅力を
ゆるゆると発信します。
by arei maeda
drop06 阿里山で美しきご来光
台湾の旅も10回目を過ぎた頃。
「そうだ、ひとり旅してみよう」と思い立ち、
今年の春先に10日間ほど休みをつくりました。
ひとりなら、地方を巡るのもいいな。
その中で、お茶と自然と両方が楽しめる阿里山なんてどうだろう。
と、ひとり盛り上がっていた最中、仕事にひと区切りをつけた長年の友が現れたため、
グッドタイミングとばかり、ひとり旅計画はあっけなく、
ふたり旅計画へと変わったのでした。
阿里山で日の出が見たくなって、今回はガイド付き一泊ツアーに申し込み。
残念ながら復旧中で鉄道旅は叶いませんでしたが、
当日の朝、嘉義駅近くの旅行会社に集合し、
ツアー参加客に混じって小型バスで、阿里山へ(なかなかのぐるぐる山道。車酔いする方はご注意を)。
※現在、阿里山森林鉄道は2009年の水害以来一部区間が不通になっていて、全線復旧は早ければ2021年7月になる見通し。
嘉義駅の駅前から阿里山行きのバスもあります(片道240元・所要時間2.5時間)。
阿里山は、実は山の名前ではなく、
正式には台湾の中西部・嘉義県の4つの郷(町)からなる『阿里山国家風景区』のこと。
その中に1400ヘクタールもの広さをもつ『阿里山国家森林遊楽区』があります。
ゲートを進むと、駐車場を起点に、飲食店やお土産どころ、
ビジターセンターやホテルが点在するメインエリアに到着。
明朝の日の出を迎えるまで、森林公園内をいざ散策へ。
訪れた3月には桜がちょうど開花した頃。
シャクナゲやモクレンの花も咲き乱れ、ひと足早い春を感じました。
ガイドは中国語がメインだったのですが、
英語の堪能な香港人の男性と友だちになり、ポイントを通訳してもらえました(多謝!)。
統治時代、日本人によって開発の手を入れられた阿里山の森林。
木材を運び出すためにつくられ、海抜2500mの登山鉄道として今は有名になった阿里山ですが、
当時、ここに自生する多くのタイワンヒノキの大木は伐採され、日本の神社仏閣に使用されたそうです。
ルートには犠牲となった樹木の魂を祀り、日本人が建てたという樹霊塔も。
複雑な思いもよぎるなか、塔そのものは救いのように感じられました。
さて、森林浴の後はいよいよ旅のメインイベント。
食事を済ませ、ホテルで一休みして早朝4時頃には起床。
「阿里山車站」で列車に乗り込み、真っ暗闇の中、ダウンを着こんだ旅行者たちは一路、
日の出スポット「祝山駅」へ向かいます。
祝山駅から10分ほど歩いた「観日楼」というビュースポットがおすすめと聞いていたため、
黙々と歩き始めたのはいいものの…なんだか胸がドキドキ、酸素が薄い?
それもそのはず、祝山駅地点は海抜2451m…。
息を切らし歩くわたしを残し、登山慣れした友は軽やかに霧の彼方へ…。
気温6℃、この日の日の出予想時刻は6:13。
なんとか到着して、静まり返る群衆の中に身を委ね、待つことしばし。
ゆっくりゆっくり、太陽の光が山の背を照らし始めると、世界は静から動へ。
右側のいちばん高い山が、玉山(かつての新高山)です。
台湾最高峰・玉山(3997m)をはじめとする連山から顔を覗かせたご来光。
言葉にならない暖かなパワーに満ちあふれていました。
私たちは毎日、眠りについて目を覚まし朝日を浴びて…という、
生と死を繰り返していると耳にしたことがありますが、
この瞬間、「生まれ変わる」という感覚が少しだけわかったような気がした体験でした。
6回目を迎えた徒然コラム『ひとしずくの台湾』、
長文を読んでくださって、ありがとうございます。
2019年も引き続き、お届けしていく予定ですので、
みなさんの楽しい旅の一助になれば幸いです。
台北でも阿里山原産のお茶は手に入りますが、 |
●写真・文/前田亜礼
■■プロフィール■■
●前田亜礼(まえだ・あれい)/福岡市在住フリーランスライター。
大分県日田市出身。台北のガイドブック執筆をきっかけに、2009年から台湾へ。
以来、仕事の合間を縫っては気まま旅を楽しんでいます。いつかは台湾暮らしを夢見て、中国語と二胡を修業中。