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column

February 08, 2026

レンズの向こう側
episode06 【2月】あやふやな気分で低画質

一枚の写真から呼び起こされる
鮮やかな記憶

自然の風景、時には街、人々
レンズを覗いた時の思い…

それらを
散りばめたフォトエッセイ

by kawakami shinya

風車並ぶ佐田岬半島

 


【2
月】あやふやな気分で低画質

先日「トイカメラ」と呼ばれるおもちゃのようなカメラを購入した。
写りは悪いが味わいがあるということで、若者を中心にブームになっているらしい。

僕はすでに世間でいわれる若者とは呼ばれない年代だろうけれど、僕だって味わいのある写りにはとても興味あるのだ。普段の仕事では5,000万画素高画質カメラを使用しているけれど、このトイカメラは150万画素。
聞きなれないレベルであるけれど、ほんとに味わいのあるものになるのかどうか、
先日ふるさと松山へと帰省する機会があったのでその道中でいろいろと試してみたのだった。 

 
Kodakという英字が描かれたボディは、手のひらに収まるくらい小さい。
例えるなら懐かしの板チューインガムとほぼ同じサイズで、おそらく重さもその程度。
これがカメラという認識はなかなかできないけれど、これこそ今までにない感覚。
とても気楽に手のひらで構えて撮ることができる。

 
そして肝心の「味わい」はというと、想像以上に写りは悪い。
明暗差があると大きく白トビするし、画像もすごく荒い。
まあこれこそがトイカメラの本質なのだろうけれど、これを「味わい」と呼ぶべきものなのかどうか、ちょっと分からない。

クラシックカメラでのフィルム写真の雰囲気は「懐かしさ」というものを強く感じて、
これが「味わい」に結びついているのだろうけれど、今回のトイカメラはちょっと違う。
何だかとてもあやふやなもの、というイメージが強い。
このあやふやこそがトイカメラの魅力ということだろうか。
くっきり明瞭な高画質とは正反対の、被写体をフワフワあやふやに変化させてしまう低画質。
今の若者の間ではこのスマホでは味わえない新鮮さ、というものが「味わい」になっているのかもしれない。


この低画質トイカメラ、新たなる写真の楽しみ方になりそうな気がするようなしないような、
そんなあやふやな気分で楽しんでいるけれど、このマイブームがいつまで続くのか、その点も含めてとてもあやふやだ。


木漏れ日の愛媛県立美術館にて

 

●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
現在は『西鉄カレンダー撮影も担当。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ
『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月) →
*『シャッター音を傍らに』(2019年7月~2025年7月) →