column
January 09, 2026
レンズの向こう側
episode05 【1月】Getting Better
一枚の写真から呼び起こされる
鮮やかな記憶
自然の風景、時には街、人々
レンズを覗いた時の思い…
それらを散りばめたフォトエッセイ
by kawakami shinya

室見川河口付近より初日の出
【1月】Getting Better
カメラマンの間ではよく「初撮り」という言葉が使われる。
新年になって初めて撮ったもの、ということだけれど、
僕にとって今年の「初撮り」は、室見川から見た初日の出となった。
いつもと変わらない日の出とはいえ、ちょっとありがたい気持ちで撮影。
今年は久しぶりに写真集を出版しようと思っているので、
いいスタート風景になったと思っている。
写真集出版は10年ぶりとなる。
それまでは3年ごとくらいに出版してきたけれど、
コロナ渦もあってずいぶんと期間が空き、
その間に世の中の価値観もずいぶん変化してきたように思うので、
ちょっと戸惑ったりしながら編集作業を続けている。
昨年の暮れ、知人が営んでいる古書店に行った時の事、本棚に見覚えのある本を見つけた。
僕が最初に出版した本『坊がつる山小屋日記』だ。
2003年出版なので、もう23年前のこと。
当時の僕は当然出版のことなど何も分からず、
とりあえず福岡で有名だった出版社に原稿と写真を持ち込んだのだった。
今でも覚えているけれど、とても緊張していた。
待ち合わせの時間まで大濠公園そばのミスドで時間をつぶしながら、
お見せする原稿を細かくチェックしていた。
その時、店内にビートルズの
『Getting Better』がかかったのだった。
正確にはポール・マッカートニーのライブバージョンだったけれど、
僕はこの前年に東京ドームでこの曲を生で聴いていたので、いっそう心に染み渡るように音楽が入ってきた。
まったく先の見えない不安の中で過ごしていた僕は、
Getting Better だんだんよくなるぞ!
このフレーズにずいぶん背中を押されたのだった。
そして最初に原稿を見てくれたのだが別府大悟氏。
緊張してどのような話をしたのかよくは覚えていないけれど、その日のうちに出版しようという話になったと思う。
そして完成した本は、めでたく増刷となり、僕の写真家人生を大きく支えてゆくこととなる。
あれから23年後の今年、別府さんと7冊目の本を世に出す準備をしている。
再び僕は『Getting Better』を口ずさんでいる。

古書店で見つけた2006年出版『坊がつる山小屋日記』
●写真・文/川上信也
■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
現在は『西鉄カレンダー』撮影も担当。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami
■前シリーズ
*『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月) →☆
*『シャッター音を傍らに』(2019年7月~2025年7月) →☆




