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column

November 04, 2025

レンズの向こう側
episode03 【11月】 ときめきの旅

一枚の写真から呼び起こされる
鮮やかな記憶

自然の風景、時には街、人々
レンズを覗いた時の思い…

それらを
散りばめたフォトエッセイ

by kawakami shinya

ミラノ発ヴェネチア行き列車 1999年


【11
月】ときめきの旅

友人が今旅に出ている。
ルーマニア、ハンガリー、ドイツを巡るそうだ。
ドイツはともかく、他の国々はどのような国なのかも想像もできないのだが、
昔からそのような国ばかり旅しているので、今ではもう驚くこともなくなった。
昨年はリトアニアとかエストニアだったか、どの辺なんだ?
 
ただ驚くのは還暦を過ぎた女性一人旅ということだ。
知り合った40代の頃もすでにそのような旅をしていて、
それがただ60を過ぎただけ、といえばまあそうなんだけど、
彼女のたださりげなく「旅に行ってくるから」と言って
軽やかに未知の外国へと旅立つ姿は次第に尊敬するようになってきた。
このような好奇心旺盛な60代の方がすぐそばにいると、
今後の人生もとても希望が持てるように思えてくる。

僕は20代後半からアジア各国とヨーロッパを何度も旅していた。
到着してゲストハウスを訪ね歩き、安く旅を続ける知恵を絞りながらのバックパッカーだ。
当時はそれが刺激的で面白かったけれど、果たしてあのような旅を今後することがあるのだろうか。

彼女が旅立って数日後にメールが届き、
バンコクでトランジット8時間待ち。
その後ブカレストに到着し、さらに10時間列車に乗って田舎の町に向かっているとのこと。
還暦青春18切符の旅。
この頃の僕は新幹線2時間でさえ苦痛に思うこともあるっていうのに。

初めての国の知らない街の駅から数時間鈍行列車に揺られ、夜の知らない街へ到着した時のあの不安感。
そしてそれと同じくらいに入り混じった心躍るときめき。
あの感覚をもう一度味わいたいなと思いながら、当時撮影した写真を時々見返している。
これら一枚一枚が今の原動力になっているのは確か。

今は九州を巡る旅を続けているけれど、
あの時と同じようなときめき、好奇心を忘れずに生きてゆきたい。
彼女のときめいた土産話を待っている。


夜のヴェネチアにて 1999年




●写真・文/川上信也

■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
現在は『西鉄カレンダー撮影も担当。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami

■前シリーズ
『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月) →
*『シャッター音を傍らに』(2019年7月~2025年7月) →