column
January 25, 2025
シャッター音を傍らに
scene56 【1月】雪道をゆく
福岡とくじゅう、時々その他…
街の中で自然にあこがれ、自然の中で街を想う
シャッター音が響くたびに、心が豊かになってゆく
そんな写真家が織り成すフォトエッセイ。
by kawakami shinya

雪化粧のアカマツに囲まれて霧島登山
【1月】雪道をゆく
先月から今月にかけ、ここ数年では珍しく雪の日が多かったので、
そうなると当然雪景色の撮影に出かけるということになって慌ただしくなる。
雪景色のニュースが流れると、もう寒いなどと言ってられないなあとかつぶやきながら準備を進め、
いざ外に出ると寒い寒いと言って車に乗り込む。
スタッドレスに加えてタイヤチェーンの装着も復習済み。

毎年チェーン装着方法を復習。なぜかいつも忘れている
そしてこの冬は雪山に3回登った。
どこも素晴らしい雪景色だったけれど、意外とそこへと向かう道中の雪道がとても印象に残っていることがある。
登山口までは当然車になるので、道路が真っ白だとそれなりに緊張感があるけれど、
もう毎年のことなので意外と冷静になっている自分もいて、車を停めて周囲の美しい冬景色を眺めていたりする。
くじゅうや阿蘇などは「まるでヨーロッパの田舎道のようだなあ」なんて
一人でつぶやきながらシャッターを押している。行ったことないけれど。

久住高原の白い道が続く

遠く山々を眺めながら登山口へ向かう
そして登山口から続く霧氷に覆われた登山道。
その白い道は正に異世界へのアプローチだ。
この先には感動的な雪山風景が待っているわけだけれど、
そこへと向かうこのアプローチでの心の高ぶりこそが貴重な時間だったりする。
周囲はいつも以上にシーンとしてるけれど、胸の音が聞こえるくらいドキドキしている(息が切れているのもある)。雪化粧の木々はそんな自分をいっせいに見つめるように静かに僕を見下ろしている。

霧氷に覆われた久住山への登山道

くじゅう扇が鼻付近にて
しかし今年の強い寒波はいつもとはちょっと違う印象も残していった。
北九州皿倉山の雪景色を撮影しようと、前日は麓の八幡駅前にあるホテルに泊まっていたのだが、
朝になると山だけでなく街中も真っ白になっていた。
多くの人がノーマルタイヤなのでホテルの駐車場から出られない人が続出。

朝起きると駐車場も銀世界
僕はスタッドレスタイヤだから大丈夫だろうと出発したのだが、
ホテル駐車場から一般道へと出る坂道でいきなり滑りながらの出庫となり、慌ててチェーンも装着することに。
さらに皿倉山駐車場へと向かう坂道は数台が立ち往生していて、
ヨーロッパの田舎道のようだなあなんてことは頭の片隅にも現れなかった。
すごく寒い中で冷や汗をかきながら皿倉山駐車場へ向かうと、ケーブルカーは雪で運休(踏んだり蹴ったり)。
悔しいので歩いて山頂まで行った。

皿倉山への登山道

車道も真っ白
雪山登山となったわけだけれど、くじゅうのように清々しい気持ちにはなかなかなれなかった。
もちろん皿倉山でも山頂では美しい雪景色に出会えたけれど、
アプローチの印象があまりにも大変だったので、その印象ばかりが強く残ってしまったのだ。
感動への道筋はその途中も非常に大切ということを改めて知ることとなった。
そして時間がたってくるとその大変さもまた良き思い出となり始め、記憶の風景も輝きを増してゆく。
そうか、記憶の風景というものは熟成してゆくものなのだということを改めて実感した今年の冬なのでした。

阿蘇山火口付近にて
●写真・文/川上信也
■■プロフィール■■
●川上信也/フォトグラファー。1971年愛媛県松山市生まれ。
福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。
その後福岡でプロ活動を開始し、様々な雑誌の撮影に関わり、風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行なっている。
ライフワークとして九州の自然風景、身近な人々のポートレートを撮り続けており、定期的に写真集を出版、写真展やトークショーを開催している。
◎webサイト:『川上信也 Photographer』⇒ https://shinya27.wixsite.com/kawakami
■前シリーズ『くじゅうの麓、白丹のルスカ』(2018年5月~2019年4月)はコチラから →☆




